東北・関東でのきのこ狩りは危険
 
◆未曾有の大地震
 2011年(平成23年)3月11日、午後2時24分。日本での観測史上最大規模の巨大地震が発生し、それによる大津波で東北・関東の太平洋沿岸の広い範囲で町が壊滅し多くの尊い命が奪われてしまった。
 遠く離れたここ奈良県でも数分間の横揺れがあり、その後のTV報道で、ヘリからの生々しい津波の中継に、しばらく体の震えが止まらないほどだった。夜になっても被害状況がつかめないまま、町全体が真っ赤な炎に包まれた気仙沼を見た時には、とても現実の出来事だとは受け入れられない気持ちになった。
 いま2週間が経過し、徐々にではあっても人々は立ち上がり始め、世界中からも温かい支援の動きが起こっている。あまりにも大きな人的、物的被害を被ったとしても、粘り強い日本人、中んずく東北の人たちは必ず復興に向けて力強く歩き始めると信じ、たとえ微力でも自分にできることを実行したいと思う。

◆福島第一原発の事故
 未曾有の被災に追い討ちをかけてしまったのが、皮肉にも、世界をリードするほどの高い安全性を誇っていた「原子力発電所」だった。想定を超えた巨大地震と津波が発生してしまったのだから、どこに問題があったとか責任はどうするなどと言う前に、一刻も早い収束と安全宣言を願いたい。
 目に見えない「脅威」に包まれることが、どれほど恐ろしいことか想像に難くない。その中で昼夜を問わず、放射能の封じ込めに携わる人たちに頭が下がる思いだ。

◆きのこが放射能を凝集
 放射能の拡散が野菜農家や酪農家を直撃している。そして、ついに首都圏の水道にまで汚染が広がってきている。東日本の台所を西日本が支えるシステム構築が、すぐにでも必要になるのだと思う。
 もう一つ、我われ「きのこファン」にとって深刻な問題がある。これから当分の間「きのこ狩り」ができなくなりそうなのだ。きのこが放射能を凝集するというのはよく知られた事実で、放射能を帯びて広範囲に降った雨を、地中などに広がった菌糸が取り込んでしまうようなのだ。
 野菜などの表面に放射性微粒子が付着している汚染とは違って、きのこの場合はその成分の多くを占める水分に放射能が含まれている。また、乾燥することでさらに濃度が高まるらしいので、キクラゲやシイタケなどの乾燥保存も危険だという。

◆15年後でも・・・
 今から25年前(1986年)に起きたチェルノブイリ原発事故は、史上最悪の汚染被害をもたらしたが、発生から15年後の2001年に欧州から輸入された生のシロカノシタから、220ベクレル/kgの放射性セシウム(Cs)が検出された記録がある。放射性セシウムの放射能半減期は約30年とのこと。
 恐らくそう遠くない日にマスコミも「きのこ狩り」に警鐘を鳴らすに違いない。実際に汚染の事実やその数値などの報道に耳を傾けたいが、はたしてその後、「食べても大丈夫」となるまでに何年かかることやら。被災地の復興よりもっと先のことかも知れない。
2011.3.24   竹 しんじ

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