シリーズ <第54回> | 竹 しんじ |
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自選 《月間MVP展》 <<<<< 2008年1月 >>>>> |
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO |
1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。
12月 MVPtop 2月
クヌギタケ属 (カサ径 2〜3ミリ) 2008.1.6 神奈川県横浜市・新治市民の森 |
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今年最初の定点観察会は暖かい陽射しに恵まれて、参加者10人はのどかな散策を楽しむことができた。 どうしてもこの時季は状態のいい硬質菌がメインの観察会になってしまうが、そこはベテランの「きのこ目」ぞろいだ。よくこんなものを見つけたと感心してしまう1種があった。 栗園の林床を探索していると、メンバーの一人が栗の実に生えた極小菌を見つけた。栗のイガから生える種類はあるが、実からじかに生えるのは聞いたことがない。 ルーペでよく観察すると柄に透明感があって、灰色のカサが中高になっている。どうやらクヌギタケ属の仲間のようだ。しっかり記録に残したいと、慎重にピントを取って何カットも撮影した。 戻る |
キアシグロタケ (カサ径 3〜4センチ) 2008.1.13 神奈川県真鶴町・真鶴半島 |
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少し雨が降ったのだからなるべく倒木や落ち枝の多い所を歩きたいと考えた。いろいろ候補地を考えているうちに真鶴半島のクロマツやスダジイが浮かび上がった。 歩いていると遠くに明るい褐色のものが見えた。「きのこではないだろう」と思いながらも気になるので近づいていくと、なんと枝の端に生えたキアシグロタケだった。遠目が効くというのはありがたいものだ。 初めイタチナミハタケかと思ったが、裏面が管口で基部が黒い。カサの色はあまり黄色くなくてアシグロタケに似た赤褐色をしているが、カサの表面に放射状に広がる細かなシワが見分けるポイントなので本種だと同定できた。 数少ない観察の中で、強く印象に残る種類だった。 戻る |
ダンアミタケ (背着生) 2008.1.27 神奈川県厚木市・七沢 |
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カサを作らずに木に全背着して広がっていく硬質菌はあまりいい被写体にはならないのだが、時どきハッと息を呑むほど神秘的で美しいシーンを見せてくれる時がある。 大きな切り株が掘り起こされて、散策路の脇に転がっていた。かなり腐朽が進んで樹種が分からなかったが、鮮やかなオレンジ色の硬質菌が管口を伸ばしていた。 このタイプのきのこはクローズアップで見ると、まるで鍾乳洞を見ているような錯覚を覚える。 極めてゆっくり、しかし着実に成長する造形は、不思議なことによく似た形になるものだ。鍾乳洞に見えたり、海底の珊瑚に見えたり、あるいは遠い宇宙の星雲にも似ていたり・・・と。 戻る |