シリーズ <第129回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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アミスギタケ
2014年 5月 5日(月・祝)

上野森林公園

三重県伊賀市
 ここ数年、春と秋が極端に短くて、冬が終わると一気に夏になってしまうように感じていた。四季の移ろいが自慢の日本だったが、まるで熱帯地方のように季節が二つになってしまったのではないかと・・・。
 ところが、今年はどういう訳か春が長い。4月初旬を過ぎると気温が上がり始め、5月には爽やかな行楽日和が続いた。その分、雨が少なくてつまらない撮影行を強いられた。
 そんな中で見付けた小さなきのこは、カサが漏斗状になったアミスギタケ。バランスよく生えた群生が魅力のきのこだがこの日はたった2本だけ。
 それでも均整の取れた姿は、ローアングルでとても美しい。せっかくのきれいな網目なので、レフ板を弱く当てて日に透ける模様を撮ってみた。管孔はハチノスタケに似た大きさだが、スラッと伸びた長い柄が魅力だ。  戻る

ムラサキフウセンタケ
2014年 5月24日(土)

生駒山麓公園

奈良県生駒市
 先週までのフィールドは、いくら「きのこ目」を凝らしても、極小菌の1本も見付けられない最悪の状態だった。今年は梅雨に入るまでダメだろうと思われた。
 ところが、週の半ばに半日ほど雨が続いた後の週末、様子は一変。本種などの手応えのある撮影ができた。
 手持ちの図鑑にはすべて、季節は「秋」と書かれているが、関西に帰ってから見かけた本種は、夏の大台ヶ原と5月の矢田山(大和郡山市)だけだ。それも、季節外れに出たというような弱々しいものではなく、今回も柄の太いずっしりとしたものだった。
 本種を撮影していつも苦労させられるのは、ヒダの描写だ。濃紺のヒダがまるで光を吸収するかのように、なかなか写ってくれない。
 この時もポケットミラーを2枚使って、ほぼダイレクトに光を反射させてやっと捉えられた。
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ドクベニタケ
2014年 5月25日(日)

くろんど園地観察会

大阪府交野市
 ベニタケ属のきのこには、華やかな色の種類がたくさんある。なので、当然写真のモデルとしてはたいへん好ましい・・・はずなのだが、どうもイマイチ写欲が湧いてこない。
 考えられる理由としては、@柄が短くて撮りづらい、A傷んでいることが多い、B撮っても名前が分からない、などなど。
 この日は珍しくきれいな姿をあちこちで見かけた。それでもパスしていたら、ついに2本並んだシーンに出会った。「それなら撮ろうか」とカメラを向け、「撮るなら同定が必要」と気の進まない味見をした。ヒダと柄が真っ白で、舌先が痛くなるほど極めて辛い。ドクベニタケだ。
 この写真、実は周囲にちょっと手を加えたアフター(演出後)写真だ。ビフォー(演出前)の様子は、観察会のメンバーだけが知っている企業秘密(?)である。 戻る

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