シリーズ <第33回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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ナナフシテングノメシガイ
(高さ 約3センチ)
2006.4.9 神奈川県平塚市・高麗山
 先月、まだ高さが7ミリしかないものを見つけて、てっきりハナヤスリタケだと思い込んだ。ところが掘ってみてもツチダンゴが見つからない。3センチにまで成長したので地下生菌の調査をしている中島稔さんに調べていただいた。
 なんとバッカクキン科ではなくテングノメシガイ科だった。ツチダンゴがないのは当然だったのだ。検鏡された胞子の写真をいただいたが、長い胞子に7つの隔壁がはっきり見えて、種名がほぼ間違いないと考えられる。
 同じ子嚢菌類とはいえ科がまったく違う種類が、外見で見分けが付かないほど似ているというのも不思議なものだ。
 
※ロールオーバーの胞子写真は中島稔氏提供。  戻る

アシナガイタチタケ
(高さ 10〜12センチ)
2006.4.15 神奈川県相模原市
 ナヨタケ属のイタチタケに近い仲間だが、春まだ早い頃に群生するという面白い特徴を持つ。
 外見は写真のようにまるでナヨタケかと思うほど弱々しいものから、かなり柄の太い大型タイプまで幅広い変化がある。
 名前の通りカサのサイズに比べて柄が長いのが特徴で、撮影のために落葉や雑草を取り除くと倒れてしまうことがある。写真のときも右端の1本は根元の枝に支えられて立っていた。
 こんなきのこでは強い風が吹けばみんな倒れてしまうのでは、と心配してしまうが、深く積もった落葉などに埋もれて生えていることが多いので、そんな環境にうまく適応した姿なのかもしれない。  戻る

ヌメリツバタケモドキ
(直径 1〜2センチ)
2006.4.19 静岡県富士宮市・西臼塚
 ブナの倒木に生えるきのこはとても絵になる被写体なので、この西臼塚一帯は気に入っている探索ポイントの一つだ。
 これも何度も訪れていろんな状態を見たから種名が分かるが、初めてなら同定に悩むところだろう。
 そっくりのヌメリツバタケとはヒダの様子で見分けるが、どちらも柄に独特のツバを付ける。ツバを境に柄の上部は白く下部は褐色になるが、そのツバが被膜を裏返したように付いている。この幼菌をよく観察していると、特有のツバの形状がどうしてできるのか、なんとなく分かってくる。
 秋に見かける大きなものはほとんど純白だが、春先に見られる小型はカサに色が付いている。  戻る

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