シリーズ <第38回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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カラハツタケ
(直径 3〜4センチ)
2006.9.10 静岡県御殿場市・太郎坊
 毎週のように探索し撮影してきてずいぶんたくさんの種類を撮ったと思っても、まだ毎月のように新しい種類に出会う。なんときのこは奥の深い分野だろうと感心してしまう。
 ベニタケ科にはあまりカサに毛が生える種類はないが、チチタケ属に数種類ある。成菌のカサの周囲にだけ毛があって幼菌にはないのでよく見てみると、幼菌ではクモの巣状の被膜がヒダを覆っていてそれが開くとカサの周囲に残るようだ。
 カサの中央が深く窪んでいるので、低いアングルで撮ると透けて見える。ベニタケ科とは思えない意外な写真になったが、このきのこが持つ普段見えない表情が撮れた。極めて辛く、有毒とも言われている。  戻る

アオズキンタケ
(高さ 2〜4センチ)
2006.9.23 静岡県富士宮市・高鉢
 9月も下旬になると富士山はどこも、背中や腰にかごを提げた人が多くなる。近ごろ各地でクマに襲われる事件が続いたので、ひとり歩きを警戒して鈴とラジオを持つことにしたが、森の中は話し声や鈴の音でとても賑やかだった。
 ゴロゴロとした溶岩にびっしり苔が生えている溶岩樹海を歩きながら、ふと足元に奇妙な色の豆粒をいくつも見つけた。何だろうと苔をよけると明るい色の柄が伸びていた。ずいぶん昔に見て以来、久びさのアオズキンタケだった。
 青というより深い緑に近く、「緑青」の色にそっくりだ。そう言えば似た色にロクショウグサレキンもあるが、それにしても不思議な色のズキンタケだ。
 菌友いわく、ぜひ「あかずきん」も見つけてほしいと。  戻る

カエンタケ
(高さ 3〜5センチ)
2006.9.24 神奈川県横浜市・四季の森
 ファインダーを覗きながら「まさに火炎だ。」とつぶやいた。
 今までごく小さなものしか見てなかったので、この公園に生えるというウワサに期待をしていた。高さは数センチだったがかなり大きくなるきのこらしい。
 本種を有名にしているのは時どき発生する死亡中毒のニュースだろう。どうしてこんなものを食べる気になるのか解せないが、ベニナギナタタケを食菌だと知って誤食してしまった例もあった。
 たとえ一命を取り留めてもかなり重度の後遺症が残ることが、最近になって分かったため古い図鑑には有毒とされていない。
 つくづく、きのこを食べる時は確実に同定のできた、美味しいものだけにしたいものだと思う。  戻る

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