シリーズ <第49回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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ナガエノヤグラタケ
(カサ径 0.5〜1センチ)
2007.8.4
山梨県富士河口湖町・富士山北麓
 溶岩樹海の窪地でタマゴタケを撮って散策路へ戻るとき、目の前に白い小さなきのこが見えた。真っ黒に朽ちたきのこの上に生えている・・・ああ、ヤグラタケか、と思ったが形がヘンだ。
 カサが三角に尖りヒダが淡褐色をしている。「この姿はアセタケ属だ」と思ったがきのこに生えるのは珍しいに違いない、と標本を持ち帰った。
 検鏡していただいた結果、ヒダに厚膜の分生胞子を作る本種だと判明。ヤグラタケに2種あることを初めて知った。もちろんアセタケ属ではなかったが、極めて珍しい種類であることは間違いなかった。朽ちたきのこもベニタケ科だと確認された。
 図鑑には熊本県で採取とあり、近年になって青森や栃木で記録があるらしい。それにしてもアセタケ属に似ている。  戻る

オオミノミミブサタケ
(高さ 3〜4センチ)
2007.8.11
静岡県富士宮市・富士山南麓
 西臼塚で偶然出会ったフジタケさん(「遊々きのこ」)がミミブサタケを見たと言うので、ぜひ撮りたいと案内してもらった。
 撮りながら、ずいぶん小型で肉が薄いことに気づいて別種では・・・と話すと、オオミノミミブサタケという別種があったような・・・ということになり、採取して確かめることにした。
 別の場所でも群生が見つかり、写真はその中の黒っぽい成菌だ。触れると音を出して胞子を噴き出す。
 後日、冷凍保存しておいたものを城川先生に検鏡していただいたところ、ほぼオオミノミミブサタケとして間違いないとの結果をいただいた。
 ヤグラタケもミミブサタケも別種があることを知らなかったが、ミミブサタケ属にはまだいくつかの種類があるかも知れないとのことだった。  戻る

ベニイロクチキムシタケ
(子実体の高さ 約1センチ)
2007.8.18
静岡県富士宮市・富士山南麓
 今年の8月は異常に暑かった。最高気温の記録も更新されるなど、あまりの猛暑に恐れをなして3週連続で富士山へ避難した。その結果1週目はヤグラタケの珍種、2週目はミミブサタケの珍種、そして3週目はなんと、冬虫夏草の珍種を発見した。
 苔むしたブナの倒木に鮮やかなオレンジ色の子実体を見つけた。よく見ると表面に粒々がある。ピンときて木を掘り起こしてみた。うまく割れて幼虫が姿を見せた。
 図鑑の絵合わせで本種と同定。ネットで調べるとかなりの希少種だと分かった。甲虫の仲間の幼虫に寄生して、1〜数本の子実体を出すのが特徴。
 これも気候変動の影響なのだろうか。諺に曰く、「竹も歩けば珍菌に当たる」と・・・。 戻る

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