シリーズ <第50回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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タマサンゴホコリ
(直径 1〜2ミリ)
2007.9.1
静岡県富士宮市・富士山南麓
 きのこの仲間ではないが、子実体を作り胞子を飛ばすというきのこに似た部分もある変形菌(粘菌とも呼ぶ)。きのこを探していると目にする機会も多いが、今までそのミクロの世界をあまり覗かなかったので、少々気味の悪い存在だった。
 しかし、ルーペでよく見ると思わず歓声をあげてしまうほど、みごとな美しさを発見することもある。9月は何種類かの変形菌を撮ったので、ちょっと趣向を変えてまとめてみた。
 タマサンゴホコリ。直径は1〜2ミリと小さいがこのみごとな細工はいったい何のためだろう。紙細工のくす玉のような姿はとても儚げで美しい。
 この形になる前の球形をよく見かけるので、意外に撮影チャンスは短いのかも知れない。  戻る

エダナシツノホコリ
(長さ 約2ミリ)
2007.9.2
神奈川県横浜市・新治市民の森
 前種に近い仲間で透明の子実体表面に白い胞子を付けるので、まるで白く輝いているように見える。図鑑によると2種ともツノホコリの亜種とされている。
 朽ちた倒木の表面にまるで白いカビのような、もやもやしたものが付着している。粘菌かも知れないとルーペを取り出して覗き込むと、予想もしなかったミクロの芸術が見えてくる。
 ところが、いざこれを撮影しようとすると、これがなかなか難しい。黒い木をバックに白い極小の被写体。普通に撮れば真っ白に飛んで何も写らない。まず、最大限に近づいて撮れるようにセットし、露出補正をかなりマイナスにする。後はブレないように固定して、息を殺して静かにシャッターを押す。
 大ため息の出る苦しい撮影だ。  戻る

イタモジホコリ
(高さ 約2ミリ)
2007.9.17
神奈川県横浜市・四季の森公園
 何でも被写体として見るクセが付いているため、変形菌の生態もよく理解していない。これは柵に使われた板の表面にあったもので、一面に黄色い粒が見えたのでひとまず撮影。モニターで拡大してみて初めて、図鑑で見覚えのある子実体だと分かった。
 何かに押しつぶされたように扁平になって、表面が細かくひび割れている。これが本種の最も成熟した姿のようだ。
 ものの本によると、マイタケ栽培の天敵ともいえるほどの害菌らしくて、主にきのこを栄養源にしている変形菌らしい。
 野外でいろんなものを観察してそれらを詳しく調べていくと、自然界には想像もつかないほど壮大で複雑で、なおかつ密接なつながりがあるものだと、改めて思い知らされる。  戻る

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