シリーズ <第51回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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アブラシメジ
(カサ径 約6センチ)
2007.10.13
静岡県富士宮市・富士山南麓
 今までいい状態を見つけられず、写真が撮れないままだった。
 富士山南麓の標高1,600mにある高鉢駐車場は、この日早朝から濃い霧に覆われていた。苔の生えた溶岩樹海を歩くと、少し開けた場所にこれが生えていた。
 カサに強いヌメリがあり周縁にはくっきりと溝線状のシワが見える。見た瞬間にそれと分かる典型的なアブラシメジだった。
 アングルを変えて何カットも撮影しながらも、意識は周囲数メートルをさまよっている。とても美味しいと聞いているのでもっと見つけたいと思ったが、あまりたくさん生える種類ではないようでこの1本だけだった。
 霧のおかげでヌメリのあるいい写真が撮れたが、乾いてしまうと同定も困難かも知れない。  戻る

クリタケ
(カサ径 3〜4センチ)
2007.10.20
山梨県甲州市・大志戸木の実の里
 シモフリシメジやクリタケを見つけると、もう今年のきのこも終盤になったと感じる。
 コナラ、ミズナラなどの広葉樹の根際に、赤褐色のきれいなカサをたくさん並べる。カサはツヤがなくしっとりしていて、周縁部には綿毛状の鱗片を付けている。綿毛はカサが開き切ると取れてしまうことが多い。
 普通はカサの直径が数センチまでだが、時どきビックリするほど大型になって同定に悩んでしまうことがある。
 また、乾燥してくるとカサの表面に数本の放射状のひび割れが現れるのも本種の特徴だ。
 食用になるきのこで群生するから収穫が見込める。味にクセがなくとても歯応えがいいから、濃い味付けにしても存在感があり、パエリアやリゾットなどが美味しかった。  戻る

ムレオオフウセンタケ
(カサ径 7〜8センチ)
2007.10.28
山梨県甲州市・大志戸木の実の里
 歩き疲れて下山している途中で、遠くにヌメリの強そうな大きなカサを見つけた。近づいてみると独特の紫色のカサがいくつも見えてきた。本種の名前通りの「群れ」状態を初めて見た。
 柄があまり太くなかったので本種らしい姿ではないが、極めてヌメリの強い紫色のまんじゅう型のカサは間違いない。カサの周囲にも白い綿毛を残している。
 地質のことはよく分からないが、図鑑によれば石灰岩地帯に生えるらしいから、この辺りもきっとそうなのだろう。かなり離れた場所でも今までに数回見つけている。
 撮影しながら「どんな料理に合うのだろう」と考えていたら、最も手間のかからない「おろし和え」を思いついた。手頃な3本を持ち帰り、とても美味しくて歯応えもよく満足できるものだった。  戻る

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