シリーズ <第64回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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シワベニヒダタケ?
(カサ径 約3センチ)
2008.11.3
神奈川県平塚市・びわ
 散策路の階段に使われた用材からきれいなきのこが1本だけ生えていた。カサの直径は3センチほどで、よく見るとツエタケに見られるような独特の模様が広がっている。
 シワベニヒダタケ(青木氏仮称)かと思ったが、以前に高麗山で見たカサにツヤのあるタイプとは違って、まるでビロードのような表面だ。しかし、ルーペでよく観察すると毛ではなく微細な粒が、その色の濃淡によって模様を描いていた。
 ヒダや柄の特徴は同じだったので同種だろうと判断したが、やはりこのカサの表情はしっかり記憶に留めておきたい。ウラベニガサ科にはまだまだ図鑑に載ってない印象的な種類があって、なかなか興味深いものがある。  戻る

ニオイオオタマシメジ
(高さ 約4センチ)
2008.11.8
神奈川県平塚市・高麗山
 前日に届いたMさんからのメールには衝撃的な写真が添付されていた。子実体をたくさん出しているニオイオオタマシメジだ。
 もう何年も定点観察を続けてきた横浜市の新治市民の森でも、毎年のようにコガネタケが生えると同時にニオイオオタマシメジの寄生した菌塊が観察される。ところがどうしても肝心の子実体を出してくれない。
 まさかマイフィールドにしている高麗山で、いきなり撮影の機会を得ることになるとは思ってもみなかった。
 この日はあまり感じなかったが、1週間後にUさんご夫妻と再訪した時は、付近一帯をまるで果樹園にいるような甘い香りが漂っていた。本種が放つブドウ果汁のような特有のニオイだった。
 Mさん、貴重な情報をありがとうございました。  戻る

キララタケ
(高さ 4〜5センチ)
2008.11.15
静岡県伊東市・一碧湖
 一碧湖は大小二つの湖からなるひょうたん型をしている。その小さい方を一周する散策路の脇に2年前きれいなキララタケの群生を見つけた。その時のカサはほとんど灰色だった。
 この日はこの一株だけしか見つからなかったが、これはこれで群生に負けない「サビ」のある表情をしている。
 初めカサの中央から乾いてきているのかと思ったが、幼菌のカサは黄褐色をしていることを思い出した。これは逆にカサの周縁からヒダの液化が進んでいるところだと分かった。
 ヒトヨタケ属というその名の通りの短命な仲間だから、こういうシーンはそれこそほんの一瞬のできごとに違いない。いい瞬間を切り取れた手応えに満足した。  戻る

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