シリーズ <第65回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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クヌギタケ属
(高さ 約1.5センチ)
2008.12.6
神奈川県平塚市・高麗山
 山道を下りながら、ふと足元に目をやると黒い小さな粒が二つ並んでいるのが見えた。まさか・・・と思いながらしゃがんでみると、紛れもなくきのこだった。
 カサの直径は数ミリしかなく、レフ板を強く当ててやっと見えた様子からクヌギタケの仲間だと分かった。下にある細い埋もれ木から生えていた。
 冬になるとどうしても極小菌を追いかける探索になるが、クヌギタケ属であることが多いようだ。カサの色が赤やオレンジ色といった華やかな種類もあり、小型と言えどもなかなかの被写体だ。
 これはカサにやや紅色が見えるので、アシナガタケやチシオタケに近い感じがする。見つけ出すのはたいへんだが、この季節に絵になるきのこは嬉しい。  戻る

ヒナコガサ
(カサ径 約5ミリ)
2008.12.20
神奈川県座間市・谷戸山公園
 「nana」・・・なんとも可愛い学名を付けてもらったものだ。
 ボロボロに朽ちた針葉樹に苔が生えて、その下から小さなきのこが生えていた。「よく見るやつだ。名前は何だったか・・・」と図鑑を繰っていて、この愉快な学名に気づいた。
 意味は「小さな」とか「可愛い」ということらしい。イメージ通りのいい名前だ。
 よく散策路の脇材などの苔の間から生えていて、よく見るとカサの真ん中が尖っている。ツヤのある褐色でカサの周囲には粗い条線がある。
 分類はあの悪名高きコレラタケと同じケコガサタケ属なので要注意だが、こんな小さなものを食用にはしないだろう。ただ、味をチェックした後はしっかり吐き出した方が無難だろう。  戻る

ヒトヨタケ
(高さ 2〜4センチ)
2008.12.28
神奈川県厚木市・七沢
 時どきアスファルトを押し上げて生える「ド根性きのこ」としてニュースになったりするが、それだけでなく、一年を通してどんな過酷な条件でも生えるとても強いきのこだ。
 真夏の炎天下に駐車場の砂利を押しのけて生えていたこともあり、今回の写真は霜が降りるほど寒い冬晴れの乾燥の中、しっかりと新鮮さを保っていた。
 極小菌でさえ見つからない真冬に何食わぬ顔で生えるのは、いったい他の種類と何が違うのだろう。撮影しながらとても不思議に思った。
 今年は夏以降に「きのこ不作」となり、ほとんどいい被写体を得られないまま過ぎてきたが、最後の日に手応えのあるきのこに出会えた。これが来年の予兆となってくれればいいのだが・・・。  戻る

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