シリーズ <第69回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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アミガサタケ
(高さ約2センチ)
2009.4.5
神奈川県横浜市・新治市民の森
 4月の定点観察会は毎年、花見の宴を兼ねて行なわれる。今年は珍しくサクラの開花期間が長かったが、それは「花散らし」の悪天がなかったということだから、きのこ観察にはあまり嬉しくないことになる。
 この日も種類が少なくて、毎年見かける顔ぶれがほとんどだった。
 疲れた足を引きずりながら駐車場へ向かう坂道を登っていると、道の脇にハンノキの実のようなものが見えた。よく見るとそれは小さなアミガサタケの頭だった。
 この仲間を見つけるのが下手で苦手意識を持っていたが、メンバー数人が通り過ぎた後で見つけたことで、その意識はちょっと払拭できた。
 タンポポやスミレなどを背景にした春爛漫の群生写真を、いつか撮りたいものだ。 戻る

ナラタケ
(高さ 約3〜4センチ)
2009.4.12
神奈川県平塚市・高麗山
 いつもいつも「苦しい時の地獄頼み」をしていては、そのうち期待はずれの日が来ると恐れていたが、まさにそんな日になりかけていた。入り口から丁寧に探しながら、気づけばもう堰堤の上まで来ていた。
 そこで遠目に見えたのは倒木上の黄色いカサ。いつもの所にいつものニガクリ・・・と思ったが、イヤにカサが傾いていて大きさも不揃いだ。「ニガクリらしくないなぁ」と近づくと、なんとナラタケの幼菌だった。
 そういえばHPを開設したばかりの頃、ナラタケが春にも出ることを知らずにビックリしたのがこの場所だった。
 ただ今回のものは黄色みが強いことや、カサ全体に褐色の鱗片があること、ツバの縁にも鱗片が残りそうなことから、仮称種のコマヤマナラタケの可能性が高そうだ。
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オオセミタケ
(高さ約3センチ)
2009.4.29
静岡県富士市・富士山南麓
 「この顔にピンときたら」は指名手配のキャッチフレーズだが、マッチ棒のようなスタイルで頭に細かな粒々があったら、冬虫夏草だと思って間違いない。
 以前は「不気味」や「残酷」というイメージを持つ人も多いのでは・・・という心配から、HPではあまり取り上げなかった。しかし、それは逆に「偏見」を助長することにもなりかねないと思うようになった。
 例えば同じ風邪のウィルスに感染しても、発症しない人やすぐに寝込む人がいるように、冬虫夏草の胞子に侵入されても平気な幼虫がいるのではないだろうか。弱い幼虫が子孫を残せないように、自然界では淘汰する力が働くのではないかと思う。
 こんな小さなきのこにいろいろ考えさせられてしまった。  戻る

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