シリーズ <第82回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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ミズタマタケ(青木氏仮称)
2010年5月2日(日)

新治市民の森

神奈川県横浜市
 そのきのこがどんな場所に生えているのか、周囲の環境を写し込んだ写真を撮りたいといつも思っている。できれば気温や湿度、さらには音やにおいまで見る人に感じてもらえる写真が撮れれば、とても嬉しいと思う。
 小さなきのこを超ローアングルで撮るために、手前の地面を掘ることもしばしばあるが、水辺に生える本種の場合は・・・さぁ困った。
 三脚をせせらぎに立てることは全くいとわないが、デジカメを水に浸けることはできない。何とかギリギリ水面に接するところで妥協した。
 春5月、まさに「水ぬるむ頃」、清いせせらぎに落ちた枝から小さなきのこが生える。カサの上の面から胞子を飛ばす子嚢菌の仲間だ。それにしてもなぜこんな所に生えるのだろう。  戻る

ハチノスタケ  落ち枝から細い柄を伸ばしてカサを広げ、粗い管孔面はちょうど「蜂の巣」のように大きな網目となる本種。恐らく和名の命名者も、単生する姿を見たに違いない。
 ところが高麗山の地獄沢には、大きなカサが大群生をする太い広葉樹の倒木がある。初めて見つけた時はスジウチワタケモドキと間違えてしまったほどだ。とても同種とは思えない姿に、ずっと疑問が消えないままだった。
 しかし、今回見つけた幼菌の群生はまさしく「蜂の巣」の集団だ。単生するハチノスタケには感じられない、生き生きとした迫力に目を見張る。
 今では逆に、これが本来のハチノスタケの姿ではないかとさえ思っている。大きな網目が放射状に広がる美しい管孔面を、何度も画面いっぱいに撮って来たが、これを見てしまうと当分の間は見劣りを感じることだろう。  戻る
2010年5月9日(日)

高麗山

神奈川県平塚市
 
ムジナタケ
2010年5月16日(日)

藤沢少年の森公園

神奈川県藤沢市
 腰をくねらせたポーズはちょっと「色っぽさ」もあってなかなかいいけれど、カサも含めた全身を眺めると、何となく「色気」というイメージから離れる。きっとカサ表面の密毛や、真っ黒のクモの巣状のツバと被膜から受ける印象のせいだろう。名前の「ムジナ」も影響しているかも知れない。ともあれ、ヒダが赤紫色に見える最も新鮮な状態を撮れたことには満足だ。
 この公園では春先から晩秋まで、長い間ムジナタケを見ることができる。ポツンと立っていることが多いが、この日は付近一帯にたくさん生えていた。
 可食なので一度くらい試してもいいとは思っているが、食指の動くきのこではない。さらに、たいてい犬の散歩コースのような所に生えているのも、食欲を衰退させる要因だ。  戻る

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