シリーズ <第106回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

1ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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マルミノアリタケ
(高さ約15ミリ・胞子飛散の瞬間)
 こんなにたくさんの子実体を出している本種を初めて見た。後方の1本も含めて1匹のアリから生えているようだ。
 構図を決めていると、モニターに何やらもやもやと動くものが見えた。ちょうど、盛んに子嚢胞子を飛ばしているところだった。何とか捉えられないだろうかとシャッターを切ったが、暗いためシャッタースピードが遅くて写らない。ISO感度を上げて、絞りを開いて・・・何度もシャッターを切ってやっと捉えた1枚だ。
 こんな神秘的な瞬間も、アリにとっては恐ろしい地獄絵に違いない。生態系の絶妙なバランスがいつまでも保たれて欲しいものだ。
 実は長い間「写真資料館」の本種記載に間違いがあった。「マルミノ」という名前からてっきり胞子が丸いのだと思い込んでいた。この写真がきっかけで調べてみて、間違いに気付いて急いで訂正した。   戻る
2012年6月17日(日)

くろんど池

奈良県生駒市

アカツムタケ
(高さ1〜3.5センチ)
2012年6月23日(土)
コウノヤマ
神野山

奈良県山添村
 アカツムタケはこんな低い山にも生えるのか・・・。こんな色のきのこは他にないので種名はすぐに分かったが、てっきり高山帯の種類だと思っていた。
 積み上げられたマツの丸太が朽ちて、苔むした所に2〜3個の成菌があり、丸太の下側の狭い所にこの一群があった。たいへんだったのがこの場所へ行くための足場で、木道から小川へ降りて、流れをまたいで茂みに潜り込む。ほんの数歩だが極めて足場が悪い。しかし、これはやり過ごせない。
 優秀食菌のチャナメツムタケと同じスギタケ属のきのこだが、本種は残念ながら有毒らしい。いや残念ではない。この美しいサーモンピンクの幼菌たちの、こんなバランスのいい生え方を撮れたら、食菌か毒があるかなんてことは、どうでもよくなってくるものだ。  戻る
 
コムラサキシメジ
(カサの直径2〜4センチ)
2012年6月30日(土)
オオブチイケコウエン
大渕池公園(東)

奈良県奈良市
 6月最後の週は梅雨の真っただ中だというのに、雨も降らず爽やかな毎日となった。過ごしやすくていいのだが、きのこが出そうな気配ではない。
 しかし、3ヵ月ぶりに歩いた公園では、そんな心配は無用とばかりに、まずまずの被写体きのこがあった。
 中でもこのコムラサキシメジは、枯葉を積み上げた所にたくさん群生していて、本種らしいきれいな色を保ったものに会うことができた。
 晩秋に出る近縁のムラサキシメジより小型で色もよく似ているが、カサの様子はかなり違う。本種は吸水性が強いため、すぐに乾いて白っぽくなってしまい、なかなかいい色のものを見付けることが少ない。
 今月のMVPもまた、個性的な種類を載せることができた。特に、色の不思議さには興味が尽きない。 戻る

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