シリーズ <第121回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
<<<<< 2013年 9月 >>>>>
MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

8月   MVPtop   10月

スオウシロオニタケ
2013年9月17日(火)

くろんど池

奈良県生駒市
 西日本を拠点にしたきのこ関連サイトでは時どき登場するテングタケ属のきのこで、手持ちの図鑑では「北陸のきのこ図鑑」に掲載されている。
 高さ5〜6センチの幼菌で、カサから下は枯葉に隠れていた。シロオニタケだろうと思って枯葉を除くと、まるで鎧で身を包んだような姿が現れた。
 この独特の大きな突起は記憶にあったので、「これがスオウか!」と思わず声に出た。何とか成菌が見たいものだと周囲を探し、この後も気にかけて歩いたが、残念ながら成菌の姿は後の目標となった。
 一番よく似ているきのこはササクレシロオニタケだろう。突起の先端がやや褐色を帯びることや、下向きに反る様子などがよく似ている。スオウシロオニタケは柄の根元が目立って太くなることや、地下部分が長く伸びて次第に細くなる点で見分けられる。親の顔はいつ見られるのか・・・。  戻る

オニイグチモドキ
2013年9月22日(日)

矢田山遊びの森

奈良県大和郡山市
 オニイグチ属の柄や管孔は、まるでブラックホールのように光を吸収すると思ったことがある。銀レフどころか鏡を使ってダイレクトに光を当てても、なかなか写真には写ってくれない。単に柄が黒いという理由だけでなく、斜面の窪んだ所や木の根元のウロなどに生えていて、とても撮りにくいということもある。
 この日見付けたこれも、茂みの奥に生えていて撮影をためらったが、状態が良さそうなので撮ることにした。
 幸いレフ板を使って光を取り込みやすい角度で、太陽からの光線の方向も好都合だった。
 幼菌のうちは管孔が真っ白で、成長とともに黒くなるが、これはちょうどその経過途中でいい瞬間を撮ることができた。
 外見が災いしてか、クセのない優秀な食菌であることは意外に知られていない事実だ。 
 戻る

ホコリタケ属
2013年9月23日(月・祝)

大和葛城山

奈良県御所市
 自分の持つ良くないジンクスはこの際棚に上げるとしても、このホコリタケのグループは多くの人にとってやっかいな存在らしい。成長による外見的な変化だけでなく、気候や発生環境によっても同種とは思えぬ個体差を見せる。比較的新しい図鑑を見ても、「今後の研究が待たれる」などと書いてある次第だ。
 この日は立て続けに3タイプのホコリタケ属に出会い、これはその中の黒っぽいタイプ。いくつかの子実体がちょうど外皮の頂部を開いたところだった。よく見ると中の白い内皮がまだ開いてなかった。この外皮が開く様子に興味を持ち、思い切りクローズアップしてみた。少し色が濃くなった中丘の部分で亀裂が起こり、それぞれの裂片が反り返っている。かなり巧妙なメカニズムがあるように見える。
 もうかなりのタイプを撮ったので、「研究の結果発表が待たれる」。戻る

8月   MVPtop   10月