シリーズ <第123回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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チシオタケ
2013年11月3日(日)

大和葛城山

奈良県御所市
 今から17〜8年、いやもっと前になるだろうか、広島と山口の県境の森で初めて小さなチシオタケに出会った。長さ30センチほどの落ち枝に数本が束生していて、その均整の取れた美しい姿に感激した。地面にカメラを押しつけて何カットも撮った。もちろんまだフィルムカメラだった。
 以来、いつもこのきのこは撮影意欲をかき立ててくれる。決して派手ではないが、カサは深みのあるワインレッドのグラデーションで、カサの縁にはきれいなフリンジ飾りまで付いている。柄の色もコーディネートされて葡萄色だ。さらに、まるで一つ一つのカサがお互いに連携し合って、全体のバランスを考えながら生えているように見える。
 この日の後も、10日の「ドキッと塾」でいいモデルを務めてくれた。いろんなアングルから撮影を楽しめるきのこだと言える。  戻る

キヒラタケ
2013年11月4日(月・振休)

大和民俗公園

奈良県大和郡山市
 「ああ、冬になってしまうのか・・・」と、本種に出会うといつもそう感じる。晩秋の肌寒い季節になると、サクラなどの落ち枝に黄色いカサをいくつも広げる。
 カサの上面は、まるで冬の寒さに備えるかのように毛に覆われ、こうしてローアングルで撮ると、トゲトゲのカサの表情が美しい。
 同じヒラタケ科のタモギタケとよく似た爽やかな黄色で、何となく美味しそうにも見えるが、本種はかなり強靱でクセのある不快臭があり食用には適さない・・・と、図鑑に書いてある。
 ヒダも黄色で、密度にはかなり個体差があるようだが、直線的にきれいに広がるので、こうしてローアングルで撮るととても美しい。これから季節が進むと、いよいよ被写体きのこが少なくなるが、本種のような寒さ好きの種類がいてくれるのは嬉しいことだ。 
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アカヤマタケ
2013年11月17日(日)

上野森林公園

三重県伊賀市
 今の仕事は年末にかけて繁忙期となるため、もう暮れまで日曜以外の休日がない。そのため、週に一回の撮影場所にどこを選ぶべきか、大いに悩むことになる。
 この日も前日にさんざん考えて、朝になってさらに迷って、この公園まで脚を伸ばすことに決めた。
 その狙いが良かったのか、スタートからまずまずの被写体が見付かり、昼ごろになってこのアカヤマタケに出会った。これはじっくり撮りたいモデルだと、まずはゴミの掃除から始める。(もっと丁寧にすべきだったと後悔)
 柄の表面に深い溝があって、ちょっと典型スタイルではないけれど、カサの色鮮やかさと縁の切れ込みは、いかにも本種らしい表情だ。
 なるべく赤い色が引き立つようにと、背景を陰にして暗くなるように撮った。柄が裂けているのがちょっと残念だが、いい色に仕上がった。 戻る

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