シリーズ <第131回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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ナヨタケ属
2014年 7月 5日(土)

生駒山麓公園

奈良県生駒市
 ムササビタケとしていいのか、あるいはそれに近い種類なのだろう。かなり昔にも、平塚市(神奈川県)の高麗山でこれとよく似たきのこを、これとよく似た構図で撮った記憶がある。
 高さは5センチほどで、小さな幼菌を従えていた。カサの表面は栗色に近い褐色で細かい条線があり、微粉状の鱗片を付けていた。
 雰囲気的にはアシナガイタチタケのような感じがするが、ヒダに淡褐色の色を持っているので、むしろムササビタケに近いように思う。
 3年前にはこの場所で、コナヨタケと同定した華奢なきのこを撮ったので、この付近はナヨタケ属が好む場所なのかも知れない。
 この日はクヌギタケ属の可憐なきのこも撮ったが、こうした小型のきのこは、たとえ撮影が困難でも肉眼では味わえない表情を切り取ることができる。手応えを感じることが多い。 戻る

スジチャダイゴケ
2014年 7月12日(土)

大和葛城山

奈良県御所市
 名前から察するに、初めはこれを苔の一種だと考えられたのではないだろうか。確かに外側の毛が少し緑色を帯びている。たぶん、緑藻類が付着しているのだろう。もっとも、これをきのことするにも無理がありそうだ。
 台風8号が紀伊半島を横断したが、予想より勢力が衰えて影響は少なかった。しかし、その後に猛暑を連れてきたので、逃げるように高山へ上がった。
 昼食にいい場所を決めて周囲を見回すと、朽ちた倒木の樹皮にこれを見付けた。直径約1センチで、内側に縦すじが見える。中のカプセルはもうかなり飛び散った後で、残ったものをギリギリのアングルで撮影した。
 ユニークなスタイルだが、意外なことに世界には数十種類もあるとか。日本産は多くないが、カプセルの白いツネノチャダイゴケにまだ出会ってない。
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タマゴタケ
2014年 7月27日(日)

神野山

奈良県山添村
 ちょうど1ヵ月前、この山に向かう道で事故に遭遇してしまった。愛車「ぶら坊」は修理困難となり、次の「ドキッと号」を入手して最初の探索地に、悪運を払拭すべく同地を選んだ。
 予想された猛暑は、曇天と時おり吹き抜ける風のおかげで、恐れたほどではなかった。
 この時季に見られる定番メニューを撮りながら、コースの終盤に差しかかると、空が暗くなり雨が降り始めた。傘を差して車に向かいながら、「関東にいた頃は、あちこちの里山でタマゴタケが見られたなぁ」と愚痴っていると、目の前になんとこれが現れた。
 我が目を疑い、他種との勘違いも考えたが、見まがうはずのない姿だ。関西では発生が少ないことを知り、半ば撮影を諦めかけていただけに、この山での出会いは嬉しい。
 悪運払拭に挑んだ見返りに違いない・・・と、都合良く解釈しておく。 戻る

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