シリーズ <第132回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
<<<<< 2014年 8月 >>>>>
MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

7月   MVPtop   9月

ナカグロキツネノカラカサ  キツネノカラカサ属に小型でカサの黒っぽいきのこがいくつかあって、少し見分けが難しい。「クロヒメカラカサタケ」はカサ表面が暗灰色で、中央が濃く周辺部に向かって薄くなり微細な粒点が広がる。「ナカグロヒメカラカサタケ」はカサ径1センチ前後と小さく、表面に褐色の粒点が放射状に広がる。
 そして本種はこの2種に比べてやや大きく、暗褐色の表皮が裂けるように鱗片になり、中央部ではほとんど黒に見える。大雑把に言って「灰色」か「茶色」か「焦げ茶色」かで、だいたい見分けられる。
 ところで、このカサ表面の写真を見て、ちょっと面白い現象を見付けた。一種の「錯視」なのだが、中央の黒い部分を凝視するとその黒い部分の面積がゆっくり広がって見える。ごく短時間だけだが、トリックアートのようで愉快だ。   戻る
2014年 8月 14日(木)

矢田山子どもの森

奈良県大和郡山市

ニオイコベニタケ  垂直に近い斜面から小さなベニタケ属のきのこが生えていた。これは10日ほど前に、やっと資料館用の写真が撮れた「ヒナベニタケ」だろうと思った。ところがよく見ると、特徴の粒状線がカサの縁に見えない。ヒダもクリーム色ではなく白かった。これはニオイコベニタケだ。
 いつものようにローアングルで構図を決めて、ヒダの面にレフ板を効かせた。すると、透けて見えていたカサ表面の紅色がサッと消えて、全体に白っぽくなってしまった。かと言ってレフを当てないと柄が暗くなってしまう。レフ板の効果を加減しながら、ちょうどいい折り合いの明るさを探るため、何カットもシャッターを切った。
 カサの直径2センチ弱の、見過ごしてしまいそうな小さなきのこに、ちょっとこだわって手応えのある写真が撮れた。   戻る
2014年 8月23日(土)

けいはんな記念公園

京都府精華町

コンイロイッポンシメジ
(近縁種)
2014年 8月24日(日)

くろんど池観察会

奈良県生駒市
 今年の8月は、異常に雨の多い月になった。広島市や福知山市、北海道の礼文島などでは、土石流や洪水によって大きな被害が出てしまった。つくづく日本の夏が凶暴になっていると感じる。
 幸いこの日の観察会は雨が降らなかったが、湿度が高くとても蒸し暑い。それでも雨のおかげで多種のきのこが見られたのは、素直に喜ぶべきだろう。
 そろそろ昼食にしようかと考えて歩いていると、道の脇に青いきのこが見付かった。状態がいいのでじっくりと撮影。本種は成熟するとヒダがピンク色を帯びるので、ローアングルに期待したが、まだ若いきのこでヒダは白かった。同属のソライロタケとはまた違う、深い青色のきのこは、その名も「コンイロイッポンシメジ」・・・ところが、検鏡の結果は胞子サイズが小さくて「近縁種らしい」となった。  戻る

7月   MVPtop   9月