シリーズ <第135回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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イッポンシメジ属
2014年11月2日(日)

矢田山遊びの森

奈良県大和郡山市
 カサが三角に開き、まっすぐに伸びた黒っぽい柄は繊維が捻れている。見付けた時はトガリウラベニタケかと思ったが、カサ中央の突起があまり目立たず条線もはっきりしていない。また、柄が細すぎて黒いのも特徴が違うようだ。ヒダは橙褐色〜肉色を帯びていたので、イッポンシメジ属には違いないだろう。苔の生えた地面に数本が散生していた。
 たとえきのこの名前が分からなくても、色鮮やかだったりバランス良く生えていたりすると、俄然、撮影意欲が湧いてじっくりと腰を据えて撮りたくなる。特に、こうして苔の間から生えていてくれると、いろんな方向から構図を探すのがとても楽しくなる。
 これから秋が深まり、冬へと向かうにつれて野山はさびしくなり、カメラを向けたくなる「モデルきのこ」は乏しくなっていく。だからこそ、「一種入魂」の意識で撮影に臨みたい。
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ホコリタケ属
 画面上に見える散策路を歩いていて、大きな球形の頭部が見えた。その大きさからてっきり「ノウタケ」だろうと思った。撮影しながらふと気付いたが、ノウタケはこんなに白っぽくないし、根元の小さな幼菌にはトゲ状の鱗片がある。するとこれは、ホコリタケということになる。もう一度改めて観察し直すと、確かにこの風貌はホコリタケの仲間に見える。それにしても、頭部の直径が6〜8センチもある大きなものは、なんという種類だろう。
 このところずっと、「ネオ一眼」と呼ばれる高倍率ズームレンズ一体型のデジカメを使っていて、長く一眼レフデジカメから遠ざかっていた。何を撮るにも便利なネオ一眼だが、やはり「一枚の作品」にこだわると、なかなか思い通りにはならない。そんな不満から、また一眼レフを使うようになってきた。この写真も、久しぶりに魚眼ズームを使って独特の視野のひずみを撮ってみた。まるで、作り物のきのこオブジェのようになった。  戻る
2014年11月 3日(月・祝)

上野森林公園

三重県伊賀市

ウラベニガサ
2014年11月30日(日)

けいはんな記念公園

京都府精華町
 前の週の後半にやっとまとまった雨が降った。とは言っても、もうこの季節になると、即、雨に反応するきのこも少なくなる。
 例によって前夜から、行き先をさんざん迷ってやっと決めたこの公園も、やはり被写体きのこは乏しかった。昼食をいつものベンチで済ませ、後半の池沿いの散策ルートに期待した。もうかなり終盤になってやっと、遠くの切り株にこれを見付けた。これはこの雨に反応したきのこに違いない。
 直射日光が当たる場所だったので、日除けの傘や銀レフを駆使しながら、あちこちからアングルを探ると、ちょうど紅葉した木々が背景に入った。今年は春も秋も長くて、「自慢したい日本」のNo.1に選ばれた「四季の移ろい」を実感できた。
 名残惜しいがその秋ももう終わりを告げ、師走からは冬将軍がやってくるらしい。
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