シリーズ <第138回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

1月   MVPtop   3月

ツノダシシトネタケ
(三村氏仮称)
 一年で最も寒くなるのがこの時季だが、今年は特にきのこにとっては厳しいようで、常連の「冬きのこ」たちの顔もほとんど見られない。そこで、今回はかなりマニアックなミクロの世界を集めてみた。
 ハコネウツギと思われる芯が空洞になった細い落ち枝に、ほぼ等間隔に黒い粒が並んでいた。老眼ではよく見えないのでルーペで覗くと、面白いことに5〜6個ずつの黒い粒があり、一部ではさらに長く伸びて指のような形になっていた。
 確かかなり前に「神奈川キノコの会」の勉強会で、これが取り上げられたことがあった。会報「くさびら」をたどってみると、第31号(2009年)に三村副会長が仮称を付けて掲載されていた。それによると、指のような角は筒状になっていて、樹皮下に埋没した個々の球体内で子嚢を作るらしい。
 角の長さは約1ミリ。きのこ規定のぎりぎりサイズだ。  戻る
2015年 2月 1日(日)

けいはんな記念公園

京都府精華町

アストロスファエリエラ属
 「きのこ」に厳密な規定がある訳ではないが、子実体が肉眼的なサイズであるというのが一般的な決まりだ。なのでこれも、ぎりぎりパスという直径1ミリの極小子嚢菌だ。
 材は枯れたタケで、その表面に黒い粒が並んでいる。表皮を突き破って出ているので、周囲でめくれ上がっているのが見える。粒の形が似ているのでカタツブタケ属?として掲載したが、リンクサイト「Discomycetes.com」(Kutsunaさん)を見て「アストロスファエリエラ ステラータ(Astrosphaeriella stellata)」だと分かった。和名はまだないので学名のカタカナ読みでしか表せないが、これを記憶できる自信は全くない。
 しかし、たとえ極小ではあっても面白い表情をなんとかカメラに納め、「こいつは何ものだろう?」と未知の世界の謎解きをするのは楽しい。 
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2015年 2月21日(土)

上野森林公園

三重県伊賀市

クロコブタケ
 これの粒サイズは約2ミリなので、前2種よりやや大きい。粒の頂部が平らな円盤になり中央が尖る姿は、クロコブタケに見られる特徴だ。しかし、クロコブタケは半球形のノイチゴ状なので、材上に平坦に並ぶ本種はきっと別種だろうと思った。
 ところが、図鑑を見ると「半球形〜平ら」となっているので、どうやらこれもクロコブタケということになりそうだ。
 写真はマクロレンズで等倍に撮ったものを、さらに6倍ほどに拡大した。決して華やかさはないが、こうした極小の子嚢菌などをルーペで覗くと、それなりに興味深い姿をしているものだ。野山にきのこが賑やかになるまでは、こんなミクロの世界を覗いてみるのも楽しいものだ。
 写真を見て気付いたが、中央下に何やら小さな虫が潜り込んでいる。クモの仲間だろうか?   戻る
2015年 2月22日(日)

矢田山遊びの森

奈良県大和郡山市

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