シリーズ <第154回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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イッポンシメジ属
(Entoloma moongum?)
2016年 6月 4日(土)

春日山原始林

奈良県奈良市
 カサの直径8ミリ。肉眼ではもっと黒っぽく見えたが、薄日が差すとカサも柄も深い紺色になった。同じイッポンシメジ属のソライロタケとはまた趣の違う、とても美しい姿だ。
 カサに全く条線がなく、柄が青いという点から、当日は「アオエノモミウラタケ?」としたが、それは柄がもっと繊維質で様子が違った。画像検索で単純に絵合わせをしてみると「Entoloma moongum」という種によく似ている。学名の発音がよく分からないが、これは「ムーンガム」ではなくきっと「モオングム」と読むのだろう。いずれにしても、何か「月」と関係がありそうな名前だ。
 小型のイッポンシメジ属には目を見張るような美しい種類がたくさんあるが、まだまだ標準和名の付いてないものが多い。本種にはぜひとも、見かけに相応しいいい名前を付けて欲しいと願う。   戻る

ベニヒダタケ  梅雨に入ると本種を見かける機会が多くなる。薄暗い森の中でもひときわ鮮やかな山吹色が目を引き、俄然、写欲をかき立ててくれる。
 今回のモデルもベストの状態で、久しぶりに「GALLERY」コーナーに展示する作品が撮れた。PCの小さな画面ではほとんど見えないが、本種のカサにはこの写真で分かるように美しい条線が並んでいる。私が理想とする「大きく引き延ばして部屋に飾る」ことで、本来の美しさが見えてくる。
 しかし、本種には大きな不満がある。それは名前だ。こんなに美しい山吹色のきのこに「ベニ」とは何たること! ヒダが紅色になるから・・・は分かるが何ともとんちんかんな名前だ。あんなに赤いのに「シロキツネノサカズキ」とか、きれいなオレンジ色の「コフキクロチャワンタケ」などなど・・・ネーミングの不満は数々ある。他にも「マルミ」や「トゲミ」、「コブミ」など、胞子の形容もきのこの姿を表していない。あ〜ぁ、歳を取ると愚痴っぽくなる。 戻る
2016年 6月19日(日)

上野森林公園

三重県伊賀市

トキイロオキナタケ
(高さ約8センチ)
2016年 6月26日(日)

大和民俗公園

奈良県大和郡山市
 入り口前のサクラ並木には、季節を追って種々のきのこが生える。この日は長く延びた夏草を刈った後だったので、何か出ていそうだと期待した。そして見付けたスタイル抜群のペアだが、名前が分からない。
 アングルを決め、レフ板をセットすると、白い柄の表面にうっすらとピンク色が見えた。「モモエノトマヤタケ」の名が浮かんだが、それはすぐに却下した。カサはみごとに平開していて、くっきりと条線が広がる。この姿には見覚えがあるぞ・・・そうだシワナシキオキナタケに似ている。
 そこから本種への連想はすぐだったが、それは帰宅後に写真を整理している時のことで、現地では同定できなかった。
 刈られた草わらから生えているようなので、地中に定住する菌ではなさそうだ。次に本種に出会うのはいつのことになるのやら。しっかり脳裏に焼き付けておきたい種だ。    戻る

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