シリーズ <第155回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

6月   MVPtop   8月

コブミノリンゴタケ
(竹しんじ仮称)
 「鍋倉渓」に沿って登る森があり、広くはないが夏になると種々のきのこが生えて、撮影を楽しませてくれる。この日はまだ被写体は少なかったが、上から引き返す道で、見慣れない赤いカサを見付けた。それぞれカサの直径が2.7センチで、とてもいい状態だったので三脚を構えてじっくり撮った。しかし、似た種類も思い浮かばないので名前が分からない。
 観察会のSさんに検鏡していただいた結果、ヒダにシスチジアがなく、無色の小さな球形胞子(4〜5μm)に数個のコブがあって所属不明となった。ひとまず仮称を、カサの外見から直感的に「リンゴシメジ」とした。
 しかし、本種の際だった特徴として、胞子のコブを表現した方がいいと考え、さらに「シメジ」が適切かどうか疑問を感じたので「コブミノリンゴタケ」に仮称を改めた。それにしても、よくいい状態に出会えたものだ。もし傷んでいたら「なんだろう?」だけで終わっていたに違いない。   戻る
2016年 7月 2日(土)

神野山(鍋倉渓)

奈良県山添村

コナカラカサタケモドキ
(高さ約1.5センチ)
2016年 7月18日(月・祝)

上野森林公園

三重県伊賀市
 また例によって、写真は目いっぱいのクローズアップで撮っているので、実際はとても小さい。しかも、これはまるでカビに侵されているかのような外見で、付近にも微粉状のものが散らばっている。
 しかし、これが本種の「正常」な幼菌の姿なのだ。柄はさらに長く伸びて、カサもちゃんと開く。ヒダを覆っている皮膜も微粉状で、柄に残ってツバとなる時もあるが、カサの縁に等間隔に付着してフリンジ飾りとなる姿は、とても儚げで一見の価値がある。ただ、容易に想像できるように、この微粉は雨などで簡単に落ちてしまうので、本種らしい成菌の姿にはなかなか出会うことができない。
 また、「千載一遇」で出会ったとしても、その撮影には細心の注意が必要で、うかつにゴミを取れないどころか、自分の鼻息で台無しにしてしまう恐れもある。その意味で今回の幼菌はまだ楽な撮影だった。    戻る

ホシミノヌメリガサ  本種を知るきっかけは、上に掲載した「コブミノリンゴタケ(仮)」をSさんに検鏡していただいた時だった。無色の小さな類球形でコブがある胞子は、「ホシミノヌメリガサ」に似ているとのことだった。本種は広島で発見された熱帯性の種類で、リンクサイト「きのこワールド」(川口さん)にも何度か登場している。なので、その姿は記憶にあった。
 この場所は去年、初めてアケボノタケを見付けたポイントだったので、かなり丁寧に探して歩いた。そしてこの花のような模様のカサを見付け、これはいい被写体だと三脚にカメラをセットした。モニターで構図を決めながら、「あれに似てるなぁ」と思った。付近には乾いてカサの模様が消えたものがいくつかあったので、標本として4〜5本採取した。
 検鏡していただいた結果、本種だと判明。分布域が広島・山口から大阪や今回の三重へと広がっているようだ。これも温暖化の影響か。 戻る
2016年 7月18日(月・祝)

上野森林公園

三重県伊賀市

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