シリーズ <第158回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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ハマクサギタマゴタケ
(村上氏仮称)
2016年10月 1日(土)

太陽が丘公園

京都府宇治市
 まず、名前の「ハマクサギ」について調べると、近畿以西に自生する植物でその葉に独特のニオイを持つとある。近縁に「クサギ」があり、同様のニオイがするらしい。私は関東にいた頃、よく里山で「コクサギ」を見かけたのでそのニオイは知っているのだが、それは科が違うのでニオイが似ているかどうかは分からない。
 で、このきのこだが、ミヤマタマゴタケにとてもよく似ている。ただ、ツボが厚く所どころ褐色を帯びる点で見分けられる。肝心のニオイは幼菌や成菌では弱く、老成したものなら確認できる。この写真の付近にあった老菌をチェックすると、覚えのある「コクサギ」に似たニオイがした。
 こうしてたくさん群生することが多いようなので、きのこのサイズと相まってかなりの迫力がある。この象牙色は成長して薄くなるようだが、成菌の群生にも出会いたいものだ。 戻る

ダイダイイグチ
2016年10月 9日(土)

くろんど池観察会

奈良県生駒市
 日本で横綱級のきのこと言えば、やはりマツタケとホンシメジになるのだろうか。当HPの「資料館コーナー」には現在1,200種以上のきのこを掲載しているが、残念ながらこの両横綱は不在だ。未だに自然に自生する場面に出会っていない。
 それ以外にも決して珍種ではないきのこでありながら、なかなか出会わない種類がいくつもある。その一つがこれだった。たいていの図鑑に載っているし、ネット上のサイトでもたびたび目にするきのこだ。小型で地味な種類ならともかく、大きくて派手な本種を見過ごすはずがない。おまけに全体が強く青変するのだから、同定を誤る可能性もない。なぜか会えないのだ。
 この日の観察会で、1週間前にあったという場所に案内してもらって、やっとこの幼菌を撮ることができた。
 これできっかけができたのだから、これからはきっと隠れずに、目の前に現れてくれるだろう。  戻る

クズヒトヨタケ
(幼菌、高さ約1.5センチ)
2016年10月23日(日)

大和民俗公園

奈良県大和郡山市
 きのこが少ないことは予想できたので、この日はどんな小さなものでもじっくり撮影することに決めていた。そして見付けたカサの直径1センチほどのクズヒトヨタケの、これはさらに小さな幼菌だ。度の進んだ老眼でなくても、これは肉眼での観察が厳しいサイズなのでルーペで覗き込む。
 きのこ探しの身支度の時、カメラや三脚などの撮影道具以外に、必ず用意する重要なアイテムがある。それがこのニコンの宝石鑑定用10倍ルーペで、もう15年以上も愛用している頼もしい相棒である。
 カサの表面にキラキラした光沢のある繊維があり、柄にもツヤのある縦の条線が走っている。ルーペでやっと見える極小世界の美しさは、フィールドでの観察の魅力であり、楽しみの一つでもある。わずかな手がかりをヒントに同定の謎解きをするのもまた、実に楽しいことだ。 戻る

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