シリーズ <第159回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

10月   MVPtop   12月

ニカワツノタケ  本種を初めて見付けたのは2010年10月の富士山南麓で、今回はそれ以来2度目となる出会いだったが、その数と勢いは前回と全く違った。樹皮の剥がれた広葉樹の表面に何列にも並んで発生していて、そのどれもがとても新鮮で美しかった。
 小さな赤紫色の粒から次第に成長して円筒型〜ツノ状になると、色はだんだん白くなって先端部ではやや透明感が出るようになる。全体がゼラチン質で大きくはキクラゲの仲間に分類され、日本でしか見ることができない珍しいきのこだ。
 前回の時も同じことを感じたが、本種をじっくり観察すると「きのこ」の形態的な多様性に改めて驚かされる。似た種類がないので独自の進化をしてきたのだろうが、胞子を作って拡散させるのにどういう都合があってこのスタイルになったのだろう。まるで個性派俳優のような雰囲気を感じる。 戻る
2016年11月 3日(水・祝)

大和葛城山

奈良県御所市

フユノコガサ
2016年11月20日(日)

くろんど園地観察会

奈良県生駒市
 実は去年もこの場所で撮った本種を、このコーナーで取り上げている。しかしそれはひと月遅い12月20日で、カサに霜が付いた寒い朝のものだった。今回は季節外れに暖かくて、少し蒸し暑ささえ感じる天候だったが、それでも季節は着実に巡っていて「冬きのこ」である本種がたくさん出ていた。
 実はこの仲間(ケコガサタケ属)は外見の似た種類がいくつもあって、肉眼での同定はちょっと難しい。本種も基準種のケコガサタケとよく似ていて、カサの様子などは見分けが付かない時がある。本コーナーで今年の4月にケコガサタケを載せているが、生える環境やそのスタイルなどもそっくりだ。見分けるポイントは柄の色で、ケコガサタケは柄の下半分が黒っぽいが本種は白い繊維状鱗片で覆われて全体に白っぽい。そして何より「季節」が、本種の同定を確かなものにしてくれる。  戻る

ヌメリスギタケモドキ
2016年11月27日(日)

大和民俗公園

奈良県大和郡山市
 今月最後の休日は残念なことに冷たい雨が降り続いていた。傘を差しながら公園内を散策しても、地面には落葉が降り積もっているので、ほとんどきのこを見付けることができない。
 それでも何とか小さな種類をいくつか撮影して、雨脚も強くなってきたので車へと急いでいたが、ふと視線を上げると立ち枯れた大木に大きなきのこがカサを開いていた。遠目にはオオワライタケのように見えたが、近くでよく観察すると本種だった。
 薄暗い場所だったので何度撮り直してみても、ぶれてしまってうまく撮れない。仕方なくストロボを使って、滅多にやらない日中シンクロで撮影した。明るくて発色も良くなるのだが、どうしても陰影がなくなって、立体感の乏しい写真になる。しっかり三脚を立てて、大きなレフ板を使って撮るべきなのだが、降りしきる雨の中ではとてもそこまでの気力が出なかった。 戻る

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