シリーズ <第166回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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オオゴムタケ  確か2000年頃、高麗山(神奈川県平塚市)で初めて本種を見付けて、三脚を構えて撮影をしていたところ、突然白い煙を噴き上げたのでびっくりした。直射日光を遮るシートをかざした時に風が当たって反応したようなのだ。本種に限らず、こうした盤菌型の子嚢菌の多くは風を感知するセンサーを持っているようで、勢いよく胞子を噴出する様子を見ることができる。
 何とかそんな瞬間を写真に納めたいと思うが、これがなかなかうまくいかない。この日は鮮度のいいオオゴムタケがたくさんあったので、久しぶりに試してみることにした。
 ISO感度を上げてシャッタースピードを早くして、構図を決めてからモデルに息を吹きかける。そして、その2秒後にシャッターを切るとちょうど胞子を噴き上げるタイミングになる。失敗するとやり直しはできない。胞子を噴き出したモデルは、当分のあいだ沈黙してしまうからだ。  戻る
2017年 6月18日(日)

ふれあいの森

大阪府四條畷市

ヒトヨタケ
2017年 6月18日(日)

ふれあいの森

大阪府四條畷市
 今年の前半は過去に経験したことがないほどの「きのこ大凶作」だった。冬は週末ごとに寒波が襲来し、春は雨が少なく行楽には最適の日々だった。気力をなくして休眠したり、出かけてみても「写真なし」に終わったりと、「嘆き節」がページからにじみ出る始末だ。
 この森は流水や湧き水があるので、カラカラに乾いてしまうことはないが、それでも見付かるのは極小菌ばかりで、縮こまった撮影になる。
 そんな中で見付けた本種は、やっと撮影の手応えを感じさせてくれた。さすがアスファルトを押し割って生えるほどの「ど根性きのこ」。乾燥などどこ吹く風と言わんばかりだ。
 やや離れた所に幼菌も生えていたので、ズームを望遠にして少し遠くから撮影した。こうすることで幼菌を引き寄せることができる。たとえ菌果が乏しくても、欲求不満は少し解消された。 戻る

アカエノベニヒダタケ
2017年 6月24日(土)

むろいけ園地

大阪府四條畷市
 もはや「カラ梅雨」などという言葉では済まされない惨状だが、そんな中で入梅から2週間ぶりの21日(水)にまとまった雨が降った。まさに待望の雨だが、おおかたのきのこサイトが口をそろえて予想する通り、この雨で反応するきのこはきっと少ない。
 案の定、散策コースの半分を過ぎる頃までカメラの出番はなかったが、やっと沼地の縁にあった朽ちた材上で、カサの直径4センチほどのきれいな本種を見付けた。ちょうどカサを開き切ったところで、隙間なく並ぶヒダがピンク色に染まっていた。
 今日はこれだけかも知れないと思ったので、2枚のレフ板を使ってじっくりと撮影した。しかし、この淡いピンク色を捉えるのはなかなか難しい。日に透ける色合いも残しながら、レフ板の強さを調整する。きのこ全体が淡い色調なので、メリハリのない写真になりやすく苦戦させられた。  戻る

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