シリーズ <第168回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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未同定
2017年 8月 6日(日)

神野山・山頂付近

奈良県山添村
 南鳥島の付近で発生した台風5号は、一回転したあと沖縄方面へ向かった。それからゆっくり北上して九州へ上陸すると思われた。
 その影響で台風の東側を反時計回りに南風が吹き込み、近畿はとても蒸し暑くなった。「屋外は危険」ということなので、午前の短時間だけ標高600m付近を歩くことにした。
 車を停めたすぐ近くに1本だけ、きれいなきのこが立っていた。カサを見てアカキツネガサかと思ったが、ツバが全くないので違う。カサの雰囲気や柄にもわずかに色があることからサマツモドキ属のように思えたが、それは単純に印象だけのこと。高さ4.5センチほどの幼菌だったので、採取せずに未同定とした。
 台風はその後、九州にも四国にも上陸せず、ここ奈良の真上を通って北陸へ向かって行った。なんと18日と18時間という歴代2位の長寿台風となって日本海へ抜けた。  戻る

ミヤマスギタケ
(青木氏仮称)
2017年 8月14日(月)

生駒山麓公園

奈良県生駒市
 一昨年の春にこの森で、マツの倒木に生える小菌を見付けた。カサの直径は1センチあまりで、鱗片のあるカサの様子からスギタケ属だろうと見当を付けた。そして、青木氏の仮称種「ミヤマスギタケ」であることが分かった。青木氏の観察資料にはカサの直径1〜1.7センチと書かれていて、強く納得したことを覚えている。
 この日、同じ公園の違う場所でこのきのこを見付けて名前が分からないまま、ローアングルで撮ると、下に見覚えのある幼菌の姿があった。
 カサの縁を覆う淡黄色の綿くず状の菌糸は本種の特徴だが、それにしても上の成菌のカサは直径2.5センチもある。こんなに大きくなることもあるのだろうか。
 青木氏が観察されたものが、たまたま小型だったということなのかもしれない。黄色いヒダや、柄の上部にある綿毛状のツバが印象的な、しっかりした肉質のきのこだった。 戻る

カバイロコナテングタケ  テングタケの仲間では少数派の暖色系で、カサも柄もオレンジ色の湿った粉で覆われている。ヒダとツバが真っ白なので、すこぶる写真向きのきのこで、状態のいい成菌に出会った時は惚れぼれしてしまう美しさだ。
 ところが困ったことに、この真っ白なツバがとても脱落しやすいため、カサを開いた成菌でツバが柄に残っていることは滅多にない。色だけでなくスラッとしたスタイルでバランス良く立っていることが多いので、ツバがなくてもそれなりにきれいな写真を撮ることができる。しかし、「きのこのポートレイト」を追いかけている者としては、やはりちゃんとツバがあってこその本種なのだ。
 この日見付けたこれも、すでにツバはずり落ちてしまっていた。柄は土に埋もれてもっと下まで伸びているのだが、慎重に掘り下げてももっと悲惨な姿になるのは目に見えている。仕方なくこのまま撮ることにした。 戻る
2017年 8月26日(土)

矢田山遊びの森

奈良県大和郡山市

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