シリーズ <第170回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
<<<<< 2017年10月 >>>>>
MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

9月   MVPtop   11月

アオイヌシメジ  きのこには、言葉で言い表しにくい神秘的な色を持つものがいくつもある。これなどもその1種で、青でも緑でもない、なんとも不思議な色合いだ。
 一年前にこの森で、カサの直径5センチを超える本種を見つけたので探しに向かったが、今年は気配すらもなかった。ガッカリしながらかなり戻った所で、カサ径1〜2センチのこれを見つけた。「おおっ、いい色だ」・・すでにだいぶ疲れてはいたが、三脚を据えてじっくり撮ることにした。
 付近に数本が散生していたが、この3本の幼菌は色もバランスも良く、とても写真向きだった。柄にもカサと同じ色が入るので、ローアングルで撮ると真っ白なヒダとのコントラストがとても美しい。ただ今回は、奥の1本がどうアングルを変えても隠れてしまうので、魅力的な色合いのカサを表現したオーソドックスな構図を選んだ。きのこ界でも少数派の「寒色系」でファンも多いが、「桜餅」そっくりの芳香を持つこともとてもユニークだ。   戻る
2017年10月 1日(日)

矢田山子どもの森

奈良県大和郡山市

ヌナワタケ
2017年10月 8日(日)

神野山・木工館下

奈良県山添村
 京都で「そんなじゅんさいな」と言えば、「そんないい加減な」という意味だ。ジュンサイはぬるぬるして箸でつかめないことから、はっきりしない、要領を得ない、定まらない、などの意味で使われる。
 そのジュンサイのことを古くは「ぬなわ(沼縄)」と呼んでいた。そのジュンサイとそっくりな粘液を柄に付けることから「ヌナワタケ」と名付けられた。うまく特徴を表していて、かつ風情も感じる秀逸なネーミングだと思う。
 今まで何度か本種を撮影する機会があったが、ことごとく不満足な結果だった。今回はカサの色が今までの白っぽいものと違って、しっかりと淡褐色の色を持っていた。そして長い柄には透明のジェルがたっぷり付いていた。
 雨のタイミングや当日の湿度などが良かったことと、これを見つけたT夫人に感謝したい。  戻る

ムラサキシメジ
2017年10月28日(土)

大和民俗公園

奈良県大和郡山市
 今年の台風はどれも、かなり意地悪な性格らしくて、ことごとく週末を狙って日本にやってくる。日本列島をすっぽり飲み込むような超大型台風21号も、それに続く22号もきっと多くの人の楽しみを奪っていったに違いない。
 22号が明日に近畿に近づくというこの日、まだ小雨程度の天気だったので近場の公園を歩くことにした。そこでいきなり出会ったのは、きのこシーズンの終盤を告げるあまり嬉しくない本種だった。まだ傷んでいない状態だったが、本種にしては色がとても薄い。有毒とされる別種「ウスムラサキシメジ」を疑ってみたが、特に変わったニオイもなく、カサの周縁部を見ると本来の色が残っていた。
 採取して翌日の「きのこ展」(京都植物園)に届けたが、会場にはすでに同じような色の本種がたくさん展示されていた。そういう年なのかな?戻る

9月   MVPtop   11月