シリーズ <第172回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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フユヤマタケ
2017年12月 3日(日)

上野森林公園

三重県伊賀市
 今年の秋は毎週末にことごとく悪天候にたたられ、ほとんど大発生を見ることなくとうとう師走になってしまった。気が付けばもうすっかり真冬の気候で、朝晩は底冷えのする寒さになった。
 そんな季節に見られる「冬きのこ」としてはヒラタケやエノキタケがよく知られているが、名前にずばり「フユ」が付く種類が二つある。その一つがこの「フユヤマタケ」で、発生はさほど多くないが同じ場所では律義に毎年顔を出す。
 いつもは特定の種類を目指して探索しない主義だが、この日は本種に期待して三重県まで足を延ばした。そして首尾よく見つけることができたのだが、どうしたことかそれ以外はただの1種も発見できなかった。
 まあ、目的は果たせたのだから良しとして、日ごろの運動不足も僅かながら解消できて良かったとしよう。 戻る

クマシメジ
ハマシメジ
 人によってはこれを「ハマシメジ」と同定するかも知れない。この「クマ」か「ハマ」かの論争は、図鑑でもネットでもなかなか決着がつかない問題のようだ。「クマシメジのカサはより黒っぽい」とか、「ハマシメジは海岸のクロマツ林に出る」など、様々な意見が見受けられる。
 一つ定着した見分け方として、「ハマシメジの幼菌にはクモの巣膜がある」というのがあるが、今回のように成菌1本だけではそれの確認ができない。私は今までに「これがハマシメジだ」というきのこに出会ってないので、この褐色の強いカサも「クマシメジ」と同定した。
 ずいぶん昔のこと、近所のマツの生えた広場に群生したねずみ色のきのこを、クマシメジと同定して食べたことがある。とてもおいしかった。今考えてもあれはクマシメジだったと思えるのだが、当時の浅い知識でずいぶん無謀なことをやったものだと呆れる次第だ。
※2019年2月に同地の幼菌でクモの巣膜を確認した。    戻る
2017年12月10日(日)

太陽が丘公園

京都府宇治市

フユノコガサ
2017年12月10日(日)

太陽が丘公園

京都府宇治市
 名前に「フユ」が付くもう1種がこの「フユノコガサ」で、フユヤマタケよりずっと小型のきのこだ。コケが広がる地面を丁寧に観察すると、点々と生えているのが見つかる。カサの直径は数ミリ〜1.5センチで、まれに2センチ近いサイズもある。
 同じような環境に生えるヒメコガサとよく似ているが、それはもっと柄が細くて華奢なきのこだ。さらにもう1種似ているのがケコガサタケで、こちらは柄が下に向かって黒くなっているので見分けられる。みんな同じチャツムタケ属だから似ているのも当然だ。
 写真の2本はまだ幼菌で、カサの幅は3ミリほどしかない。まばらに広がって生えている中で、バランスよく束生しているものや、カサが少し乾いてきれいな表情になっているものを探して撮っていた。そうして見つけたこの幼菌は、コケに囲まれていい雰囲気だったので、絞りを変えながらじっくり撮影した。  戻る

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