シリーズ <第178回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
<<<<< 2018年 6月 >>>>>
MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

5月   MVPtop   7月

コツブヒメヒガサヒトヨタケ  このきのこの名前をスラスラとよどみなく言える人は、かなりのきのこマニアでも少ないに違いない。そっくりの別種「ヒメヒガサヒトヨタケ」よりも、胞子のサイズが小さいので、ただでさえ長い名前にさらに「コツブ」が付けられた。きのこ自体は本種の方がやや大きくなるので、種名はちょっとややこしい。あまり密集して群生しないという特徴もあるので、無謀にも肉眼でこの2種を見分けているが、悩ましい時もあって確定的ではない。今回はカサの直径が2センチ以上あって、数本がまばらに生えていたので本種とした。
 紙よりも薄いカサを蛇の目傘のように開き、その稜線には橙褐色のラインが弧を描いて伸びている。こうしてクローズアップで見ると、まるで手の込んだ工芸品のようだ。いつもならグッとアングルを下げて、虫が見上げるようなシーンを撮りたいところだが、すでにヒダがまだらに黒くなっていたので今回はカサの表情を撮ることにした。  戻る
2018年 6月10日(日)

大和民俗公園

奈良県大和郡山市

ガンタケ
2018年 6月16日(土)

上野森林公園

三重県伊賀市
 推理小説でよく、死の直前に言葉を書き残す「ダイイングメッセージ」というのが出てくる。
 かなり昔のこと、神奈川県でとあるきのこ観察会に参加した時、誰かに踏み潰されたガンタケを見つけた。決して目に留まらないほどのサイズではないのに、なんともうっかり者の観察者だなぁと思った。ところがよく見ると、そこにはなんと靴底の模様がクッキリと赤く浮き出ていた。「踏んだのはコ・イ・ツ・ダ・・・」とばかりに、まるでガンタケの残したダイイングメッセージのように思えて愉快だった。
 傷ついた所が赤く変色する特徴のガンタケは、成長も傷むのも早いので、なかなか撮り頃の姿を見ることが少ない。この日見つけたこれはほとんど痛みのない美しい姿で、真っ白なヒダがとても印象的だった。ただ、カサ表面の手前半分のイボが、前日の雨に流されていたのがちょっと残念だった。  戻る

イッポンシメジ属
2018年 6月24日(日)

矢田山子どもの森

奈良県大和郡山市
 近ごろはちょっとした上り坂でもすぐに息が切れてしまうので、きのこを探していてもつい手抜きをしてしまう。
 この日も薄暗い森の入り口から中を見渡して、目ぼしいものがないので先へ行きかけた。しかし、今はまだ小型菌しかないのだから、やはり丁寧に探さないといいモデルには出会えないと思い留まり、ゆっくりと森に入り込んだ。
 ふと立ち止まって足元を見た時、靴の数センチ先に小さな青紫色のカサがあった。「おっとあぶない」もうちょっとで踏み潰すところだった。
 紺色系の小型のイッポンシメジ属には、よく似た種類がいくつもあって同定が難しい。「ヒメコンか?これこそがアオエかなぁ・・・」などとブツブツつぶやきながら撮影。図鑑を開いても、ネットで検索しても、結局ドンピシャとはならずに属止まり。まあ、納得の写真が撮れればそれで良し。  戻る

5月   MVPtop   7月