シリーズ <第180回> | 竹 しんじ |
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自選 《月間MVP展》 <<<<< 2018年 8月 >>>>> |
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO |
一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。
7月 MVPtop 9月
ヒロヒダタケモドキ | |
2018年 8月25日(土) 神野山・山頂付近 奈良県山添村 |
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気象庁が「もはや自然災害レベル」と認めた今年の猛暑。7月上旬から始まって、台風などで中断するも今なお続いている。連日、夕立も降らない晴天が続いては、この老体に鞭打ってまで出かける気にはなれない。3回しか歩いてないので、今月のMVPはすべて最終日のものになった。 朽ちたマツの倒木で別のきのこを撮りながら、ふと目に留まったカサは小型のヒロヒダタケに見えた。ところがよく見ると、中央が強く窪んでいてヒダが垂生している。そして柄の表面には灰色の細かな鱗片が付いていた。「これはモドキの方だ・・・それにしてもよく似ている」と思った。 ややまれな種類らしく図鑑やネットでも写真が少ないが、ここ奈良県ではこれで2度目の観察だ。カサと柄の色の濃さには変異があるが、すっきりしたカヤタケ型のスタイルは写真のモデルとしてとてもいい。 戻る |
ニセコナカブリ | これも少し珍しいきのこで、2009年に富士山で見て以来なんと9年ぶりの再会だ。写真のカサはやや大きめのサイズで直径2センチほどだった。付近の落ち枝や木の幹など、広範囲にたくさん白いカサを作っていた。表面は白いフェルト状でツヤはなく、基部には白い密毛が付いている。柄はほとんどないか、ごく短いものが付いていることもある。特徴的なのはヒダの色で、中心から次第に褐色を帯び始めて全体に広がっていくようだ。 本種はチャヒラタケ属の仲間で、ニセの付かない「コナカブリ」とは外見がほとんど同じらしい。顕微鏡的には胞子サイズに差があって、本種の方がひと回り大きい。この2種の肉眼同定は発生している樹種で見分けられるようだ。本種は種々の広葉樹に生え、コナカブリはトドマツなどの針葉樹に生える。 ヒダを撮っている時にちょうど薄日が差して、いい表情になった。 戻る |
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2018年 8月25日(土) 神野山・山頂付近 奈良県山添村 |
ニカワホウキタケ | 写真から「熱」を感じていただけたら嬉しい。初めて本種を見たのは富士山の森の中だったが、まるで苔むした地面から炎が噴き出しているような姿だった。 今回はまだ高さが3センチほどの幼菌だったが、真上から見るとそれぞれの枝先が鮮黄色に輝いていた。三脚の1本を伸ばして真上からのアングルにセットして、マクロレンズで絞りをf 3.2まで開いて−1補正で撮影。さらにトリミングとコントラストを加えて、こんな写真が出来上がった。 図鑑に使うための生態写真とは違って、そのきのこらしさを表現したポートレイト的な写真は、撮っていてなかなか楽しいものだ。しかし、何度もその種類を観察しないと、本当の「らしさ」は分からないものだ。 この日も猛暑日になってすっかり歩き疲れてしまったが、最後に手応えを感じる写真が撮れて満足だ。納得して次の日を休養日とした。 戻る |
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2018年 8月25日(土) 神野山・山頂付近 奈良県山添村 |