シリーズ <第181回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
<<<<< 2018年 9月 >>>>>
MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

8月   MVPtop   10月

フクロタケ
2018年 9月 2日(土)

大和民俗公園

奈良県大和郡山市
 強烈な猛暑日の余波がまだ残るこの日、園内には目ぼしい被写体がなく、ツチグリの幼菌でも撮ってしまう状況だった。しかし諦めかけて歩いていると、落ち葉をかき集めた所にツブカラカサタケの群生があった。そしてそのすぐ近くに、見慣れないきのこが立っていた。
 カサは灰色の細かい放射状の線が広がり、柄の根元には大きな袋がある。なんと、初めて見るフクロタケだ。より大型のクロフクロタケは本種の変種であり、ツボの色が黒いので見分けられる。
 中国や東南アジアの料理によく使われる「袋茸」は本種の幼菌で、世界三大栽培きのこの1種となっているが、自然に自生していることはかなりまれなようだ。どうしてそれが、この公園の落ち葉置き場に現れたのかがとても不思議だが、こんな瞬間に出会えた幸運には感謝したい。 戻る

ムラサキアブラシメジモドキ  長い名前だ。きのこには「モドキ」の付く種類がたくさんある。そして「モドキ」の付かない本家よりも、普通種である場合も少なくない。
 この日、長く出そびれていた「夏きのこ」のテングタケ属やイグチの仲間が、まるでうっぷんを晴らすようにたくさん出ていたが、その中でこれが唯一のフウセンタケ属だった。この場所では今までにも数回見つけて撮っているが、ずっと「モドキ」として掲載してきた。
 しかし、本種の場合は「本家」との違いが微妙で、いまだに決め手を見つけていない。やや大型で柄が太く、カサの表面に白い斑紋が出ている場合は「本家」と同定しているが、斑紋がない場合も多いので困る。顕微鏡的にも違いはわずかなようで、胞子の形が微妙に違うらしい。
 この写真も柄の下半分が白くなって悩ましいのだが、とりあえず「モドキ」を付けておこう。いつか、白い斑点を付けてほほ笑むかもしれない。 戻る
2018年 9月17日(月・祝)

神野山・木工館下

奈良県山添村

アケボノドクツルタケ  今月に入ってようやく気温も落ち着きを取り戻し、雨もよく降るようになった。そんな中、西日本の各地から「ハマクサギタマゴタケ(仮)」の群生情報が聞こえてくるようになった。ここ関西でもいろんな場所で、大型で端正な姿が観察されていた。
 この日の前日も大和葛城山へ行った折に、ふもとで大きな数本を見ることができたので、この日、駐車場の傍に群生していたこれを見つけて、何の疑いもなく「ハマクサギタマゴタケ」だと思った。一通り撮影を終えてクサギのニオイを確かめたが、全く無臭だった。それでもまだ「幼〜成菌はニオイが弱い」からだと思っていた。
 PCに取り込んだ写真を見ていてやっとカサに条線がないことに気づき、ドクツルタケの仲間だと判明。カサ中央が淡黄色で、無臭だったことが手掛かりになり本種と同定できた。これも「怪我の功名」と言えるのか? 戻る
2018年 9月24日(月・振休)

矢田山子どもの森

奈良県大和郡山市

8月   MVPtop   10月