シリーズ <第182回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

9月   MVPtop   11月

サマツモドキ  富士山の南麓でウラジロモミの古木に生える大きな本種を何度も見ていたので、てっきり高所に多いきのこだと思っていた。しかし、里山などの平地でもややサイズが小型になるものの、決して珍しい種類ではない。
 この日の観察会で見つかったこれは、階段に使われた針葉樹の用材から大きなカサを開いていて、遠くからでもよく目立って存在感があった。
 さてこの「サマツ」だが、いろいろ調べても定義が定まらない。「春に出るマツタケ」とか「マツタケに似た別種」の名前だということらしい。近ごろ人工栽培ができたと話題になったバカマツタケの別名でもあるらしい。どうもしっくりしない理由は、本種があまりマツタケに似ていないからだろう。
 食用にはなるらしいが、うまいという噂は聞かない。おまけに人によっては軽い中毒をおこすらしいので「狩り」の対象にはなりにくいが、大きく開いたカサはダイナミックで被写体としては優れている。  戻る
2018年10月 7日(日)

くろんど池

奈良県生駒市

カワウソタケ
2018年10月 7日(日)

くろんど池

奈良県生駒市
 上と同じ観察会の日、サクラの古木にたくさんのカサを並べていた。「ああ、これはサクラによく出る・・・あれだ」と、すぐに名前が出てこない。決して年齢によるめぐりの悪さではないことは、明言しておきたい。
 このきのこの姿を観察して、どうやったら「カワウソ」が連想できるのか未だによく分からないからだ。例えばイタチタケなら、黄色っぽいカサの色がイタチを思わせる。ムジナタケのカサの毛並みも、どことなくそれっぽい雰囲気がある。
 まあ、命名者がそう思ったのだから仕方がないのかもしれないが、本種に近縁の種には「ラッコタケ」というのもあって、もうここまでくると、無理やり適当な中型哺乳類の名前を付けた感がある。この他にもいろいろと動物の名前が付けられていて、それはそれで楽しいし、姿を思い浮かべながら観察するのもなかなか愉快だ。 戻る

アオゾメツチカブリ  チチタケ属の中でやや大きめの白い種類がいくつかあって、見分け方がちょっとややこしい。まず「ケシロハツ」と「ケシロハツモドキ」は、カサの表面に微毛が密生する。ヒダは「ケシロハツ」が疎で、「ケシロハツモドキ」が密だ。そして、カサに毛がないのが「ツチカブリ」と「ツチカブリモドキ」で、ヒダは「ツチカブリ」が密で「ツチカブリモドキ」が疎だから、この4種は本家とモドキでヒダの疎密が捻じれ現象になっている。
 で、今回のアオゾメツチカブリはどうかと言うと、「ツチカブリ」の変種とする説もあるように、外見もヒダが密な点もそっくりだ。何が違うかと言えば「アオゾメ」の名の通り、乳の色が青緑色に変色する。ただ、かなりゆっくりなので現地で傷つけてもなかなか確認できない。そこで、すでに傷ついているカサを見て、その乳の色で同定する方が手っ取り早い。あまり濃い色ではなく、色褪せた青緑色なので、注意深く観察する必要がある。 戻る
2018年10月14日(日)

神野山

奈良県山添村

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