シリーズ <第187回> | 竹 しんじ |
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自選 《月間MVP展》 <<<<< 2019年 3月 >>>>> |
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO |
一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。
2月 MVPtop 4月
カラムラサキハツ |
ベニタケの仲間が出始めると「いよいよ夏が始まる」というイメージを持っているが、本種は春まだ肌寒い頃に姿を見せる。ベニタケ属のトップバッターという感じだ。 名前の「カラ」は辛いという意味で、きのこ観察をする人は一度はその味を経験しておくべきだろう。ただし、舌に痛みを感じるほどの辛さなので、ごく少量で十分だし、体験も一度で十分だろう。 カサの色はかなり複雑で個体差も大きい。ベースカラーは赤みを帯びた紫色なのだが、中央部分では黒や灰色、緑色などが見られる。時にはほとんど全体が白いこともあって、かなり数多くを観察して経験値を積まないと、肉眼同定が難しい種類かもしれない。ただ多くの場合、カサの縁の部分には赤〜紅色が見られるので手掛かりにはなるだろう。ヒダも柄も真っ白で、柄の白さには独特の透明感があるので分かりやすい。 戻る |
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2019年 3月 5日(火) 京都府城陽市 |
カバイロサカズキタケ | 眠い時にこの写真を見ると、思わずあくびを誘われそうになるのではないだろうか。ようやく日中の気温が15度を超えてぽかぽか陽気になる頃、散策路脇の側溝に沿って、広い範囲にたくさん並んで発生する所がある。先月末に見た時は、まだ1センチほどの幼菌だった。 本種を初めて見た時に、この独特の内側の色をなんと表現したらいいだろうと悩んだ。図鑑には灰褐色〜黒褐色などと記載されているが、そこにちょっと紫色を加えた微妙な色合いだ。しばらく眺めるうちに、ふと、「そうだ、こし餡の色に似ている」と思った。それ以来、これを「おしるこ色」と呼ぶことにしている。 大きく成長すると縁の部分に亀裂が入り、だらしなく(?)広がってしまうことが多いが、幼菌から成菌の姿はそれぞれに愉快な表情があって、写真のモデルとしてはとても楽しい。あくびではなく「春が来たよ〜」と歌っているのだ。 戻る |
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2019年 3月26日(火) 太陽が丘公園 京都府宇治市 |
ニセヒメチチタケ |
これも早春の頃から出始める「春きのこ」の1種。2016年2月にこの場所でごく小さな幼菌を見た記憶があったので、注意深く探してみると、まるでフジの種子かと思うような直径1.5センチのカサを見つけた。この森ではこれからしばらく、広い範囲で本種をたくさん見ることができるが、やはりトップバッターにはスポットを当てたいものだ。 この季節としては数少ない貴重なモデルなので、丁寧に枯葉などを取り除き、好きなアングルをあちこち模索する。柄が白っぽい微毛で覆われているので、ローアングルでも本種らしい表情を表現することができる。 小さいきのこを近接撮影すると、どうしてもピントが浅くなってしまう。そこで今回も「深度合成」という裏ワザを使ってピントを深くした。この方法は高画質を維持できるのでとても気に入っているが、それがかえってサイズ感覚を狂わせてしまう。大きく見えてしまうので乱用には注意したい。 戻る |
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2019年 3月27日(水) 矢田山子どもの森 奈良県大和郡山市 |