シリーズ <第188回>


竹 しんじ
自選  《月間MV展》
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MONTHLY MOST VALUABLE PHOTO

一ヵ月ごとの「きのこ探して」の中で、印象に残ったものを自選してみました。

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アミガサタケ
2019年 4月23日(火)

矢田山子どもの森

奈良県大和郡山市
 アミガサタケを見るのは久しぶりで、去年は一度も出会わなかった。
 さて、簡単に「アミガサタケ」と言い切っているが、分類という学術的な面から考えると――あまり考えたくないが――そう簡単にはいかない。頭部の形や網目の様子、柄の太さや表面の様子、さらにはその二つの接合部分の様子、そしてもちろん顕微鏡的な特徴などなど、タイプの異なる種類がたくさんあるのだ。
 事実、今回のものも、いわゆる典型の本種に比べると頭部が長い。写真はまだ高さ4センチほどの幼菌だが、この時点ですでにかなりの面長である。ところが、そうやって細かく分類しようとしても、明らかに別種だと言える例は少なくて、変種レベルに置かれることが多い。
 そんな難しい話は横に置いて、花も虫もすっかり春めいた野原で、緑に包まれた本種の撮影を楽しんだ。戻る

ニオイアシナガタケ
2019年 4月26日(金)

水度神社

京都府城陽市
 すっかり腐朽が進んだ材上に、小型のきのこが束生していた。初めは朽ちた材がマツに見えたのでアクニオイタケだろうと思った。ところが、アングルを低くすると思った以上に柄が長い。「こりゃ、違うなぁ」と思いながら好きなアングルで撮影。
 終わってから一番右のカサをひとかけ摘まんで、指先でつぶしてニオイを嗅いでみた。弱いながらも覚えのある薬品臭がした。どうやらニオイアシナガタケのようだと思ったが、アクニオイタケも似たようなニオイなので決定的ではない。
 アクニオイタケのカサはこんなに開くことはないだろう・・・とも思ったが、かなり昔に神奈川県の真鶴半島で、舞い踊るように反り返ったアクニオイタケの群生を見たことを思い出した。
 いや悩むのはやめよう、こんなに柄が長いのは、名前の通りニオイアシナガタケでいいことに決めた。 戻る

ハゴロモイタチタケ
2019年 4月26日(金)

水度神社

京都府城陽市
 疲れてきたからそろそろ引き返そう・・・いやもう少し。そんなことを何度か繰り返した時、目の前にとても新鮮なきのこが数本立っていた。久しぶりに見る本種だった。
 琵琶湖のすぐ北に小さな湖「余呉(よご)湖」がある。神代の昔、そこに天女たちが舞い降りて水浴びをした。その中の一人を見染めた男が、その天女の羽衣を奪って隠し云々・・・という「羽衣伝説」は有名だが、その余呉湖の付近で観察されたので「ハゴロモ」と付けられたのが本種だ。
 小〜中型菌の多いナヨタケ属の中では大きくなるきのこで、最大ではカサの直径10センチ近くにもなる。肉質も本属では珍しくしっかりしていて簡単には壊れない。同属の他種のようにこれも無毒だと思われるが、このボリュームだとなかなか旨そうに見える。はたして羽衣を纏った天女は魅力的に微笑むのか、それとも・・・戻る

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