今日はどこまで行ったやら･･･

２００８年
９月

現在へ

２００８

２００７年へ

１月　２月　３月　４月　５月　６月　７月　８月　９月　１０月　１１月　１２月

２００９年へ

２００８年９月２９日(月）ニセクロハツモドキ？	昨日の高尾山の勉強会で奇妙なきのこが１本あった。やや柄が長いもののヒダが密であることから、ベニタケ属のクロハツモドキであることは間違いないようだ。ところがヒダの部分や切断面に現れた変色部分は、赤くなったままで１時間以上経過しても一向に黒変する様子がない。　つまり変色の様子は猛毒とされるニセクロハツなのだが、それにしてはヒダが密であるため形態はクロハツモドキになる。　導かれる結論は一つ、クロハツの仲間を食用にすることは止めるべきだということだ。「今まで何度も食べているから大丈夫」が最も危険なのだ。
２００８年９月２８日(日）高尾山東京都八王子市（神奈川キノコの会勉強会）	昨年の９月に高尾山で勉強会が行なわれた時はあいにくの雨だったが、ビックリするほどたくさんの大きなイグチが採取されていた。今日は曇り空で気温も一気に下がったので、きっと様子がかなり違うだろうと思った。　案の定、少し渇き気味の地面にはほとんどきのこが見つからない。それでもさすがベテランの「きのこ目」集団だけあっていろいろ探し当てる。　枯葉と同じような色で初めのうちは見落としていたカサも、目が慣れてくると次々に見つかる。今日もっともたくさん採取されていたのはモリノフジイロタケだった。新鮮な時は柄の上部やカサの周囲に明るい紫色が見える。　広葉樹の埋もれ木から小型の黄色いカサが生えていた。ヒダがきれいなピンク色をしているのでウラベニガサ科のきのこだ。多分２００６年１０月に伊豆の一碧湖で見つけたものと同じで、「北陸のきのこ図鑑」に掲載の仮称種アカエノベニヒダタケとよく似ている。　カラカサタケの幼菌が面白いポーズをとっていた。虫にかじられた後で乾燥が加わったのだろうか。頭の部分をよく見ると、鱗片がまるで目鼻のように見えて愉快な表情だ。　すぐ近くではヒメツチグリがひと塊に生えていた。ちょうど開き始めのものもあり普通なら外皮が反り返るようになるはずだが、これも乾燥で止まってしまったように見える。　見慣れない小さなフウセンタケ科のきのこを見つけた。カサは黄色くてツヤがあり柄は白く下部が太くなっている。ややクセのあるニオイがしたのでワカフサタケ属のきのこではないだろうか。　同じ時期に同じ場所を歩いても、きのこの顔ぶれが全く違うのにはもうすっかり慣れたが、だからこそ予測のつかない面白さも逆にあるのだと言える。




２００８年９月２３日（火・祝）富士山東麓静岡県小山町	久しぶりにふじあざみラインから須走口五合目に登り、東麓の小富士付近を探索してきた。まだ少し早すぎたのかきのこの姿は少なかった。　なぜかキノボリイグチとは縁が薄く未だにいい写真が撮れてないのだが、今回も「それらしき」という幼菌を１個だけ見つけた。カサの中央に盛り上がった鱗片が付くのは本種だろうと思うが、赤くないし木にも登ってない。　フウセンタケ属の仲間はとても似たものが多くおまけに環境などで変化するため、図鑑やネットで探しても分からないものがいくつもある。今回も黒っぽいカサのフウセンタケ属が同定できない。カサだけに強いヌメリがあり柄の根元はかぶら状に膨らむ。　あちこちにハナイグチの幼菌が出ていたので撮っていると、すぐ横に黒いカサのきのこが１本出ていた。放射状に黒いササクレがあるがクロゲシメジにしては周縁部が白すぎる。どうやらネズミシメジだと思うが、カサ中央の尖りが弱いのが気になる。無臭で味もそれほど不快ではなかった。　サイズや種類が何であれ数本が密集して生えているといい被写体になる。しかし、これは撮影しながらずっと種名が分からなかった。最後に標本撮影をするため１本採取してヒダを見て、どうやらササタケらしいことが分かった。今まで見たものよりやや大きく形も整っている。　コケの上に純白の小さなきのこが生えていた。ヒダが柄に垂生しているのでオトメノカサだと思ったが、カサの強い粘性が気になった。オトメノカサは粘性がないはず･･･と図鑑を見ると、これはより小型のコオトメノカサだと分かった。　車へと戻る途中で大きくて派手なカサを見つけた。オオキノボリイグチだ！･･･と、思わず声を上げた。見たいと思っていた種類だが、今回はすでに老菌で管孔はどろどろに流れていた。しかし、この迫力のある斑点模様は十分に撮影の価値がある。不思議な模様を持ったきのこだ。　まだ関東は最高気温が３０度に届く日があるが、今週末頃からは秋めいた日になりそうだ。





２００８年９月２１日(日) 松原湖の旅② 長野県小海町	雨は未明に止んだようでとても澄んだ空気の朝を迎えた。まずは朝食前に松原湖畔を探索しようと、早朝からスタート。　昨日の最後近くに見つかったきのこが気になって確認に向かった。カサはクロゲシメジとそっくりなのだが、柄がもろくポキポキと折れる。まるでベニタケ科のようだったのでもしや珍種では･･･と期待した。それは湖畔のベンチの下に生えていて極めて撮影困難だったが、撮影後に柄を調べると縦に繊維が走っていることが分かった。やはりクロゲシメジだった。　宿のご主人に今面白い場所を教えていただき、期待に胸膨らませていざ出発。最初のポイントでいきなりみごとなベニテングタケの歓迎(?)を受けた。夜にかなり強い雨が降ったにもかかわらず、カサの白いイボがきれいに揃っていた。　カサの周囲にきれいに被膜の名残を付けているきのこを見つけた。イタチタケやムササビタケがよくこういう姿を見せるが、これはスタイルから判断してムササビタケに近いように思う。　「いい被写体がある」と仲間の呼ぶ声が聞こえ駆けつけてみると、なんとそこに一度は見たいと思っていたツノシメジが地面に生えていた。確か材上生だったはずだと根元を確認すると、埋もれたダケカンバの枝から生えていた。褐色のトゲに覆われたカサと柄に、真っ白のヒダがきれいなコントラストを見せていた。　さらにその先へ進むとまたまたすばらしい被写体が待っていた。ちょうど１０年前の夏に広島で出会ったコガネテングタケによって今の撮影スタイルに導かれたのだが、そのみごとさに勝るとも劣らない美しいコガネテングタケが立っている。しかも幼菌と並んだ様子までそっくりだ。本種はあまりきれいな姿ではない場合が多いが、２度もこんな機会があるとはとても幸運だ。　もう１種、ずっと見たいと思っていた種類を見つけた。カバノキ属の木にしか生えないカンバタケだ。シラカバの倒木に数個並んで生えていた。図鑑での印象はかなり硬いきのこに思えたが、やや柔軟なきのこで手で少し曲げることができる。　午後にはまた雨が降り始めたので早めに切り上げて帰路に着いた。今回のツアーは悪天候の間を縫うようにうまく探索でき、初めて見る種類もあってとても有意義な内容だった。





２００８年９月２０日(土) 松原湖の旅① 長野県小海町	定点観察仲間の有志５人で、かつて宿泊勉強会でお世話になった松原湖畔の「ファミリーロッジ宮本屋」に宿を取り、きのこツアーに出かけた。心配した台風は幸いにも速度を速めてくれたので、出発時から雨は止んでいた。　目的地の松原湖周辺は明日の楽しみにして、まずその先の大月湖に向かった。適当に車を停めて探し始めると、カラマツ林の中にはあちこちにハナイグチの幼菌が頭を出していてうかつに歩くと踏み潰してしまう。少し柄の長い幼菌を見つけてアップで撮ってみた。　湖畔で弁当を広げていても、みんなの目は周囲をさまよっている。ふと見ると紫色のホウキタケ型きのこが見えた。しかし、近づいてよく見ると姿はホウキタケではなくカレエダタケに似ている。後で宿に着いてから図鑑「北陸のきのこ」を見ると、ムラサキホウキタケモドキの脚注にあるハイイロカレエダタケによく符合する。　宿に着いてから少し付近を歩くと、カラマツの根際に大きなススケヤマドリタケがカサを広げていた。すでにカサは反り返り、柄の表面も面白い形に裂けていたが、それでも貫禄を感じる存在感があった。　きのこ一家Ｕさんの奥さんは、みんなが通り過ぎた後でもいいきのこを見つける名人だが、今回も最後尾を歩いていて茂みの中のきれいなきのこを見つけた。オレンジ色が鮮やかなカバイロオオホウライタケだ。コケをバックに輝くような美しさを見せていた。　付近にある神社の境内では、それまでいくつも見つけていたシロヌメリイグチのとてもきれいな状態が見つかった･･･と、誰も疑わなかった。しかし、後で宿のご主人に聞いてヌメリイグチだと分かった。そう言われればツバの上に黒い粒点がある。それまで見てきたたくさんのシロヌメリイグチのカサの色とそっくりだった。　小型のアカヤマタケ属のきのこがコケの地面に数種類並んでいて、その中にワカクサタケもいくつかあった。新鮮な状態でしかこの緑色が見られないので、いい色を探していると３本並んだきれいなものを見つけた。　夜からまた雨が降り始めた。朝までに止んでくれるだろうか。





２００８年９月１９日(金) 泉の森公園神奈川県大和市	今日は１日残っていた夏休みを取った。一旦は台湾から中国へ向かっていた台風１３号が、まさしくどういう風の吹き回しか一転して日本に向かって来た。今年初めての接近台風だというから、珍しく台風の来ない年のようだ。　時おり小雨がパラつく中、大型菌に期待して歩き始めた。この公園は比較的大きなきのこをよく見た所だが、今日は残念ながらタイミングが悪かったようだ。しばらく歩いてやっと見つけのは小さなホウライタケ属の菌輪だった。１個のカサの直径が１センチほどで、束になって生えたものが菌輪を描くように並んでいた。　テングタケ科の幼菌を一つ見つけた。ツルタケとは様子が違うがまだヒダがよく見えない。少し離れてツルタケダマシの成菌があったのできっとその幼菌だろう。　そのすぐ傍に初めて見る小型のきのこがあった。カサの真ん中が乳頭状になり細かなシワがある。柄は縦の繊維模様がありツヤがないのでフミヅキタケ属のように見える。ヒダは白く、ルーペでよく観察すると表面がかすかにピンク色に見えたのでイッポンシメジ科かも知れないが、まったく分からない。　積み上げられた針葉樹の枝に２センチほどの小さな白いカサが開いていた。薄暗い中でまるで花が咲いているような繊細な美しさがあった。ツバがありヒダが柄に離生しているのでキヌカラカサタケ属だろうと思うが、カサの表面はまるでヒトヨタケ属のような表情だ。　ハリガネオチバタケがずいぶんあちこちで群生していた。かなり大きなカサ･･･と言っても１センチほどの２本を逆光で撮ってみた。　もう１種よく見かけたのがキツネノカラカサだが、状態のいいのがなくてやり過ごしていたら最後にいい被写体があった。ちょうどカサを開いた状態で、新鮮な時は柄に黄色い水滴を付けることが多い。　大型菌が見つかりそうにないので午前だけで引き上げた。　※明日から１泊で長野県へ出かけるので、次回の更新は９月２１日以降になります。





２００８年９月１５日(月・祝）藤沢少年の森公園神奈川県藤沢市高麗山・地獄沢神奈川県平塚市	里山できのこがたくさん出ているのなら、ぜひチェックしておきたい場所がある。カラカラ天気でも保水状態のいい「少年の森」だ。しかも朝までに雨が降ったようで、森の中はとてもいい雰囲気だった。すぐにでも姿のいい大型菌に出会えるものと歩き始めたが、どうした訳かほとんどきのこがない。　水分の多い低地はまったくゼロの状態で、尾根筋へ出てようやくコシロオニタケの幼菌を見つけた。首をかしげた表情がほほえましいと思ったが、よく見ると膨らんだ根元がゴッソリとかじられて萎れかけているのだった。ナメクジの仕業だろうか。　ここは諦めて「地獄沢」へ行こうと車に戻る途中、とても新鮮な白い硬質菌を見つけた。きれいなチリメンタケだった。ここではなぜか新鮮な硬質菌とよく出会う。　「地獄沢」では雨が降らなかったようなので、さらにひどい状態かと思ったが、入り口からすぐのところでウスヒラタケが並んでいた。わずかに灰色を帯びたきれいなカサだった。　あちこちにキイロイグチが生えていたが、すでに傷んだ老菌が多かった。最も状態のいい成菌を選んで撮影。被膜が取れてない幼菌の写真は多いが、今まで成菌のいい写真がなかった。　埋もれた倒木から１本だけ大きなヤナギマツタケが生えていた。昨日の新治ではカサの直径が数ミリというヤナギマツタケが見つかったが、こちらは直径約１０センチの大きなもの。本当に同種でいいのかと思うが、各部の特徴はそっくり同じなのが愉快だ。　同じ神奈川県下の里山公園で、なぜこんなに発生状態が違うのだろう。つくづくきのこを読むのは難しいと感じた。




２００８年９月１４日(日) 新治市民の森公園神奈川県横浜市	今月は第一日曜に富士山での勉強会があったので、定点観察会は１週間順延して今日行なわれた。結果的にはタイミングが幸運だったようで、たくさんの種類を観察することができた。ただ、昨日までの秋の爽やかさはなくなって、とても蒸し暑い一日だった。　最初にキタマゴタケが群生したことのある公園外の路地を見に行った。キタマゴタケは見つからなかったが、短い距離の間にずいぶん多種のきのこが生えていた。中でもテングタケの幼菌はまさに写真映えのするきれいなものだった。　たくさんの種類の中から普段あまり見かけないものを取り上げると、まず高さが１．５センチほどしかない小さなコナカラカサタケモドキ。テングタケ科には粉まみれのきのこが何種もあるが、これはハラタケ科キツネノカラカサ属のきのこで、内被膜が裂けてカサの縁に均等に並ぶ姿がきれいだ。　一方、大きい方の種類では高さ２０センチほどもあるシロオニタケモドキ。初め柄の下部に縦の裂け目があることやカサの表面に並ぶイボが角錐に見えてオニテングタケだと同定したが、W女史にツバがある点でシロオニタケモドキだと教わった。オニテングタケにツバがないということに改めて気づいた。　先週の富士山でも観察されていたが、ここにもコンイロイッポンシメジがいくつか見つかった。本種としては小型だったがカサの濃い紺色は独特で、ピンク色のヒダとのコントラストもきれいだ。　今日はあちこちでツルタケやカバイロツルタケを見かけたが、探索終了近くで斜面にたくさん生えるカバイロツルタケが見つかった。柄が長い割にカサが小さいので１本だけだと構図のバランスが良くないが、きれいに３本並んでくれるとフレームにうまく収まる。　久しぶりに汗とやぶ蚊に悩まされる撮影で、すっかりバテてしまった。




２００８年９月１３日(土) 甲斐大和山梨県甲州市	秋の気配を感じるようになると行ってみたくなる場所がいろいろ浮かんでくる。ここもその一つ、多彩な顔ぶれで撮影を楽しませてくれる場所だ。まだ少し早いように思ったが、きっと何か目新しいものが見つかるような気がして行ってみた。　歩き始めてすぐに失敗したと思った。地面がからからに乾いていて、たまに目に留まるきのこも完全に干からびている。そんな中、やっと元気な一群に出会った。ここで何度か見かけたササクレフウセンタケかと思ったが、何となく様子が違う。これは見たいと思っていたキンチャフウセンタケの方だ。外見はよく似ているが柄にササクレがなく糸屑状の繊維に覆われている。　きのこ狩りの二人連れと話しているとご主人(?)が「いい状態だけど撮りますか？」･･･見ると大きな木の根際にニガクリタケが群生していた。もちろん狩りの対象外だが被写体にはいいきのこだ。　予想したほどにはテングタケ科のきのこが出てなかったが、カバイロツルタケがとてもきれいな姿で立っていた。　最初のポイントはあまりにきのこが少なかったので早めに切り上げて、もう少し低い場所へ移動した。すると車を停めたそのすぐ傍にヤマドリタケモドキがあった。柄の太いいい状態に見えたが、撮影後に採取すると柄の中はすでにボロボロだった。　急斜面でいくつかの種類を撮っていると、遠くに紫色の塊が見えた。見たいと思っていたウスムラサキホウキタケだ。大喜びで近づいてみると、これもまた乾燥してひび割れていた。瑞々しさがなくて残念だが初めて見るボリュームのあるきのこだ。　もう１種、初めて見るホウキタケの仲間を見つけた。全体にツヤのない黄褐色をしていて、地面には同じ色の胞子が積もっている。手持ちの図鑑に載っているどれとも違うような外見で、ホウキタケの仲間はいったい何種類あるのだろうかと思う。　さっきのきのこ狩りの人がコウタケを採っていたので、前に幼菌の写真を撮ったポイントへ行ってみると、一株だけ生えていた。さっきの場所のものに比べるとこれは裏面の針が短いタイプで、香りも強いように思う。種類が違うのかも知れない。　ここはもうひと雨降れば一気に賑やかになりそうな雰囲気だ。






２００８年９月　７日(日) 富士山・太郎坊静岡県御殿場市 (神奈川キノコの会勉強会)	この季節は山でなくても天気が変わりやすいものだが、今年の富士山・太郎坊での勉強会もよく雨の降る一日だった。　集合前にちょっと立ち寄ってみた場所では、これぞ完璧な姿だと思えるみごとなタマゴタケがあった。色と言い形と言いパーフェクトな状態で、何となく誇らしげに立っている雰囲気さえ漂っていた。　勉強会はあまりたくさんの種類を観察できなかったが、とても興味深い１種を見つけた。広葉樹と思われる朽ちた倒木に鮮やかな黄色のきのこが１本だけ生えていた。柄を覗き込むと焦げ茶色の薄いツバがある。全く分からない種類だったので慎重に採取して鑑定してもらった。その結果も不明となったが、もう１本同種と思われる標本があり、どうやらオオワライタケらしいことが分かった。　会員のＩさんが３色のきのこが並んでいる面白いシーンを見つけた。うまくフレームに納まりそうなので構図を決めてみた。きのこが少ない日にこんなシーンが撮れるのも不思議なものだ。　ヌメリガサ科の大きなものがあり、アカヤマタケかと思ったが全く黒変している部分がない。よく見るとカサの中央が三角に尖り、強い粘性がある。となるとトガリツキミタケになるが、こんな大きくなるのかと驚いた。　鑑定後の説明の途中で大粒の雨が降り出してしまい、夕方からは広い範囲で豪雨となった。



２００８年９月　６日(土）高麗山・湘南平神奈川県平塚市	少しは朝夕が過ごしやすくなったので８時頃に湘南平から歩き始めた。いや、まだまだ「残暑」を甘く見てはいけなかった。撮影を始めると大げさでなく滝のように汗が噴き出す。そして、残り時間にゆとりがなくなった蚊どもは、蚊取り線香の煙などものともせず、決死の覚悟で襲ってくる。　かと言って、今日は雨を受けていい被写体が多かったので、こっちも引き下がってはいられない。　最初に目に留まったのはバランスよく並んだヤマイグチだった。柄の表面に隆起した黒い鱗片を付け、柄の上部が急に細くなる独特のスタイルだ。　しばらく進むと、黄色い粉をいっぱい付けたカサを見つけた。久しぶりに見るキワタゲテングタケだ。少し離れて幼菌もあった。しかし、強い不快臭がありヒダがオレンジ色を帯びるとされる特徴とは違い、ヒダは黄色でニオイがない。城川先生がキヒダキワタゲテングタケと仮称されている種類のようだ。　そのすぐ傍に見慣れない栗色のカサが見えた。カキシメジによく似たヌメリのあるカサだが柄にははっきりツバがある。どうやらチャヌメリカラカサタケのようだ。ちょっと珍しい種類だがこの付近では時どき見かける。　散策路にササクレがきれいに並んだカサを見つけた。こういう生え方はアセタケ属に多いので多分その仲間だと思ったが、柄を見るとはっきりしないツバがありその下には綿屑状のものが付いている。今日よく見かけたワタカラカサタケによく似ている。カサの鱗片の様子が違うので別種かも知れない。　笹薮の中に白いカサがたくさん生えていた。カサの上に淡褐色の大きな鱗片を付けるドクカラカサタケだ。別名コカラカサタケというが、有毒なので「ドク」の方がインパクトがあり覚えやすい。カサも柄も傷つくとすぐに赤くなる。　次も強い毒を持つとウワサのあるウスキテングタケだが、何とも可愛い幼菌でさらに根元には生まれたばかりの幼菌もある。この場所では数年前に群生を見ているので、これからたくさん生えるのだろう。　「テングタケ通り」の主役タマゴタケはここ数年発生が少なかったが、ようやく大型のものがたくさん生えていた。まだ頭も出してない卵そのものもたくさんあったので、これから１週間ほどはここも賑やかになるだろう。　つい撮影に夢中になってしまうと、気温３０度以上の蒸し暑い中で思いのほか体力を消耗していることに気づかない。車に戻る登り道ではすっかりバテてしまった。






２００８年９月　２日(火) 青森の旅③ 梵珠山・県民の森青森県青森市	朝からどんより雲って嫌な予感がしたが、見る見る雲が消えて行き青空が広がった。午後早い便で帰るため午前中だけしか撮影できない。となれば初日にいい感触だった「梵珠山」の別のコースを歩くのがいいだろう。　選んだのが登山コースだったので坂が急だったが、晴れても気温２４度という快適さで汗が出ない。前回のコスリコギタケがここでもたくさんあったが、それに混じってクチベニタケも数を競っていた。　通りがかりの男性と挨拶のついでにちょっと道を尋ねた。･･･うかつだった。帰ってきた答の９０％ほどは全く意味が分からなかった。困惑の顔に気づかれたのか「ここらの人じゃないのか？」という部分だけ分かった。　ブナの太い幹に大きなムカシオオミダレタケが数個生えていた。幅が１２～３センチもありまだ新鮮な様子なのに、なぜかカサの中央のトゲ状の部分がなくなっていた。虫に食べられたのか全部のカサがそうなっていた。　細いブナの根元には初めて見る赤いきのこが生えていた。この特徴は図鑑で見た記憶があったので探してみると、すぐにアカツブフウセンタケだと分かった。高さが３～５センチと小型ながら、なかなか写真向きの華やかなきのこだ。　続いて紫色のフウセンタケ科のきのこが見つかった。これはその名もムラサキフウセンタケで分かりやすいが、針葉樹林に生えていると「オオ」が頭に付く別種になる。ツヤがなく濃い紫なので撮影がとても難しくて思うように色が出ない。　そして最後にもう１種フウセンタケ科を見つけた。きっとこれからピークを迎えるハシリに違いないヌメリササタケだ。これを見つけて東北はもう秋が始まっていると実感した。　たった７５分のフライトで真夏に帰ってきた。きのこの顔ぶれはこれからが本格シーズンなのだろうが、やはり「宝庫」だと納得した。




２００８年９月　１日(月) 青森の旅② 八甲田山～蔦野鳥の森～奥入瀬渓流青森県青森市／十和田市	昨夜からの雨が朝になっても残っていたが、もう豪雨になる様子はないので、計画通り八甲田山へ向けて出発した。広大な八甲田山系のどこを歩くべきか決めかねていたが、出発前の昨日の朝たまたまＮＨＫで放送していた「蔦の七沼」を見て行ってみることにした。　青森市街地から１時間足らずでブナやミズナラ、カラマツ、モミなどが混じる大自然の中に入り込む。小雨が降ったり止んだりしたので、止んでいるうちに車を停めて森を歩いてみた。　やはりこの場所もきのこは多い。傷んだものやありふれた種類はやり過ごしていると、ホウロクタケが群生する倒木の脇に黒いカサを見つけた。ヒロヒダタケかと思ったが放射状の条線が見えない。ヒダを覗き込むと柄も黒っぽくてヒダが垂生している。これはヤギタケだ。　遠くに小さな赤いカサが見えて近づくと、なかなか撮れないでいたヒメベニテングタケだった。遥か昔に奈良で一度見たきり出会う機会がなかった。テングタケの仲間とは思えない小さなきのこで、カサの紅色のグラデーションが何とも美しい。次の探索地「蔦野鳥の森」でももう少し伸びたものを見つけた。　その「蔦野鳥の森」ではたびたび雨に邪魔をされて思うように撮れなかったが、歩き始めてすぐにオオワライタケを見つけた。足場が悪くローアングルを撮ることができなかったが、苦さを確認するために少しだけかじってみた。少しだけでも充分過ぎた。　スギタケモドキの幼菌がたくさん生えていて、そのイガグリ頭の密集した様子はとても個性的で愉快だ。今日は数ヵ所でスギタケモドキを見つけたがすべて幼菌の集団で成菌はなかった。　朽ちた倒木の傍で地面と同化している地味なカサを見つけた。これが目に留まったのは雨に濡れて光っていたからだ。地面からローアングルで見てもヒダらしいものが見えない。それもそのはずで採取してみるとハンノキイグチだった。　最後の目的地「奥入瀬渓流」に到着し、霧雨が降る中探索を開始した。しかし、やはりこの場所はきのこ探しより景観を楽しむべき場所のようだ。何度も立ち止まっては美しい流れを眺めてしまう。雨で水流に勢いがあるのだが、そのせいでやや濁っているのは残念だった。ちょっと絵葉書写真でもいいからと撮影。　苔むした立ち枯れの木に小さなきのこが生えていて、渓流をバックに構図を決めてみた。種名は分からないが恐らくクヌギタケ属だろう。　最後に見慣れない模様のカサを見つけた。朽ちた切り株から生えていてカサには放射状に褐色の模様がある。白い柄には大きなツバがあり、ヒダも真っ白だ。ツバの周囲に褐色の鱗片が並んでいるが、これはオニタケの特徴だ･･･と、もう一度カサをよく見ると小さな丸い窪みがいくつもある。雨ですっかり鱗片が取れてしまったオニタケのようだが、切り株から生えたりするのだろうか。　ホテルへの帰路は夕焼けに向かって走った。最終日くらいは雨のない日にしてくれ。






２００８年８月３１日(日) 青森の旅① 梵珠山・県民の森青森県青森市	出身地が関西ということもあって北海道や東北はとても遠い所だという思いが強いのだが、よく「きのこの宝庫」などと表現されるので行ってみたい思いも強かった。今回、遅めの夏休みを取って２泊３日の「青森・空の旅」を敢行した。青森空港からレンタカーを使えば、八甲田山や奥入瀬渓流も十分行動半径内だ。　長かった「ゲリラ豪雨」も何とか今朝には治まってくれた。フライトがやや遅れて昼過ぎに青森に到着し、早速レンタカーで最初の目的地「梵珠山」へ向かった。曇り空で日も短くなっているから急がないと暗くなってしまう。　着いてすぐに散策コースへ入ったが、いきなりアラゲホコリタケが出迎えてくれた。さほど珍しくはないが今まで撮影チャンスがなかった種類だ。トゲだらけの表面は何となくひょうきんでイガグリやウニのようにも見える。　そこから先はもう「きのこ爆発」状態で、目を走らせる方向には必ず何らかのきのこがある。大型のものはすでに朽ちたものが多かったが、いい状態のものをすべて撮っていると前へ進めなくなる。平凡な種類はパスすることにして先を急いだ。　斜面に初めて見る種類のコスリコギタケが生えていた。大きいもので高さ８センチほど。幼菌も含めてたくさん群生していた。いろんな形のきのこがある中でずいぶん安直にデザインしたという感じのスタイルだ。　道の真ん中に黒っぽいホウキタケの仲間が生えていた。近づいてよく見ると独特の色と形はトビイロホウキタケに似ている。もしそうなら幼菌の時は先端がきれいな空色なのだが、今回は幼菌を見つけられなかった。　紫色のヌメリのあるカサが目に留まった。ムラサキアブラシメジモドキという長い名前だが、これもまた図鑑には「モドキ」しか載ってない。ローアングルで撮ると白っぽいヒダがとても美しい。　次も強いヌメリのあるきのこだがこれはチチタケの仲間で、乳の色が白から紫色に変わるトビチャチチタケだ。　今日見つけた中で全くナゾの種類があった。一見ヒトヨタケ属の幼菌に似ているが高さが６センチもあってかなり大きい。現地でよく観察しなかったのが悔やまれるが、写真を見るとどうやらカサを開くきのこではないようだ。表面が細かくひび割れて、柄の部分では中の白い繊維状のものが見えている。　※後日、これはワタカラカサタケの幼菌だと判明した。　５時を過ぎるともう撮影は無理な状態で、夜にはまた雨が降り出した。